★★★★☆
あらすじ
全米オープンへの調整のために小さな大会に出場したテニス選手は、妻が見守る中、彼女の元恋人でもあるかつての親友と決勝を戦うことになる。131分。
感想
地方で行われるテニス大会決勝の試合開始とともに映画は始まる。そして試合の様子と同時に、戦う選手二人とそれを見守る女性の過去が回想され、ここに至るまで三人の物語が浮かび上がってくる。なんでもないテニスの試合が、次第に興味深いものになってくるのが面白い。
描かれるのは、同じテニススクール出身の高校生二人が女子テニスのスター選手に夢中になったことから始まる三角関係だ。ただ、三人が最初に出会った夜の、ホテルでのシーンがそのものズバリだったが、女はそこに別のものを見ていた。彼女がしてやったりと微笑むのが印象的だ。
今まであまり気にしたことはなかったが、三角関係は同性同士の間にも特別な感情があるものなのかもしれない。大好きな友人が好きになったから自分も好きになる、ということか。男二人の距離が近いし、妙に男の裸が登場するしで、同性愛を匂わす雰囲気がプンプンと漂っている。二人がチュロスを食べるシーンも意味深だ。
やがて三人の関係は変化していく。一人は彼女と結婚して一流プレーヤーとなるが、もう一人は選手として底辺をさまよっている。二人を分けたのはテニスへの愛だろうか。怪我でプロを諦めた女は、それでもテニスへの情熱は失わなかった。それを共有したのが結婚した男で、拒絶した男は落ちぶれた。三角関係がメインであまりテニス映画という感じはないのだが、ここにテニスに対するリスペクトはある。
二人の結婚で三角関係は終わるはずだが、女は自分に抗おうとする男を忘れることができなかった。彼女が低迷する男のランキングを即答するところからもそれはうかがえる。男はそれがわかっているし、夫となった男もそれに気づいている。そうして三角関係は続いた。
過去の経緯と試合内容がリンクしながら、試合は最終セットを迎える。サーブのシーンは間がたっぷりとあり過ぎて意図に気づいてしまったが、ニヤリとさせられるシーンだった。すべてが明らかになった後の男たちのプレーは、彼女がかつて話していたような純度を増したものになっていく。
終盤に向けて尻上がりに盛り上がっていく展開だ。伏線が効いており、最初は少し場違いに感じた特徴的な音楽も段々とクセになってくる。三人の最初の夜に起きたことが、大好きなテニスの試合で起きたのだから、そりゃ彼女も叫ぶわと爽快感のあるエンディングだった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 ルカ・グァダニーノ
製作/出演 ゼンデイヤ
出演 ジョシュ・オコナー/マイク・ファイスト
音楽 トレント・レズナー/アッティカス・ロス