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「ソフィーの選択」 1982

ソフィーの選択 (字幕版)

★★★☆☆

 

あらすじ

 作家を目指してニューヨークにやってきた南部の青年は、上階に住むポーランド人女性とユダヤ系アメリカ人のカップルと知り合い仲良くなる。

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 アカデミー賞主演女優賞。151分。

 

感想

 ブルックリンで風変わりなカップルと知り合った南部の青年が主人公だ。カップルのポーランド系移民の女性ソフィーにほのかな恋心を抱くようになる。男二人に女一人の三角関係が描かれていくが、三人が友だちの関係ではなく、一組のカップルと一人の男と明確に分けられる組み合わせなので、どうしても主人公に邪魔者感がある。

 

 カップルが目の前でいちゃつく時間があったりするのに、主人公はよく平気でずっと一緒にいられるものだ。たまに一緒に過ごすならいいが、いつも一緒だとさすがに気持ち悪い。本当は主人公にも恋人がいれば、二組のカップルの話となって落ち着くのだが、彼に恋人ができないのだから仕方がない。それにこういう歪な関係には、大抵誰かの密かな恋心が潜んでいるものだ。

 

 

 この三人の奇妙な関係を描きながら、ポーランド人女性ソフィーの過去が少しずつ明らかにされていく。彼女はナチスドイツの収容所にいたことは明かしているが、その詳細についてはなかなか語ろうとしない。戦時中の話で、あまり思い出したくないことばかりだろうからそっとしておけばいいのに、主人公がちゃんと話をしてごらん、という態度なのが不可解だった。

 

 過去は包み隠さず正直に告白した方がいいという考え方なのだろうか。宗教的な倫理観からきているのかもしれないが、とても酷なことをしている。作家としての好奇心もあったのではないかと邪推してしまう。話せば楽になることもあるからその気になったら聞くよ、ぐらいのスタンスであればよかった。

 

 女性がどんな酷い目に遭ってきたのかと戦々恐々としていたのだが、親の影響で加担者側にいたことが分かって意表を突かれた。だが戦争は、多くの人が何らかの関与をして起きるわけだから、純粋な戦争被害者というのは少ないのかもしれない。無邪気に悪意を剥き出しにしたり、プロパガンダに乗せられ踊ってしまうことで戦争への流れを生み出していく。戦後それに気まずい思いをする人は多いだろう。

 

 そんな彼女も結局、敵国のポーランド人ということでナチスの収容所に入れられてしまう。こんな風に、そっち側にいるつもりだったのにこっち側として扱われて当惑していた人はたくさんいたのかもしれない。今でも、こっち側なのになんでそっち側にいるみたいな振る舞いをするのだろうと不思議に思う人はあちこちで見かける。

 

 収容所で彼女は、究極の決断を下していたことが明らかになる。これが、彼女をどこかエキセントリックな男と付き合わさせ、どこか地に足が付かない暮らしをさせていた要因だった。あんな過去を背負ってしまったら、もはやまともに生きていく気力など湧かないのだろう。同じように心に闇を抱えた男と共鳴するのは理解できるような気がする。

 

 暗い過去を持つポーランド人女性を演じたメリル・ストリープが、迫真の演技を見せている。特に戦時中の頬がこけ、やせ細った姿には痛ましさがあった。訛りのある英語も良かった。

 

 彼女をはじめ多くの人たちが命令に黙々と従い、列車に乗り込んで収容所に運ばれていく様子に、人を効率的に殺すためのシステムを運用しているナチスの異常さや恐ろしさがひしひしと伝わってくる。人間のやることではない。

 

 彼女のように誰にも言えない、言いたくない過去を抱えてしまう人がたくさん生まれてしまう戦争なんて、やるものではないなと当たり前の想いを改めて強くした。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 アラン・J・パクラ

 

原作 ソフィーの選択 上巻 (新潮文庫 ス 11-1)


出演

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ケヴィン・クライン/ピーター・マクニコル/(声)ジョセフ・ソマー

 

音楽 マーヴィン・ハムリッシュ

 

ソフィーの選択 (字幕版)

ソフィーの選択 (字幕版)

  • メリル・ストリープ
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ソフィーの選択 - Wikipedia

 

 

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