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「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」 2017

バトル・オブ・ザ・セクシーズ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 1973年、男女の賃金格差是正を訴え、女子テニス協会を立ち上げたテニス選手、ビリー・ジーン・キングは、往年の男子テニスの名選手ボビー・リッグスに「男対女」の試合を挑まれる。

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 実話を基にした作品。

 

感想

 男女間の賃金格差の是正を目指し、女性選手の地位向上のために戦った女子テニス選手の物語だ。一般的に男女には体力差があるので、それが格差の理由だと男性側は反論する。だがそれに対する主人公の、興行としての集客数には大差がないのだからそれはおかしい、という主張は納得できるものだった。ビジネスとして稼いでいる金額が同じなら、同じだけの賃金を支払うべきだろう。

 

 だがテニスは、プレイヤーが男でも女でも集客数がさして変わらない、スポーツの中でも珍しい競技かもしれない。他にはゴルフや陸上競技などがあるくらいだろうか。女子サッカーや女子バスケなどは一時的なブームが起こることはあるが、一般的には男子よりも集客数が少なく、注目度が低い。これらのスポーツでも同様の議論が起こることがあるが、これに関してはどう捉えるべきなのか、今はちょっと分からない。ただ主張すること自体は悪くないだろう。

 

 主人公は当時のトップ・プレイヤーでありながら、格差を訴えて行動した。選手としてトップにいるだけでも大変なのに、そんなことまでするなんて素直に感心してしまった。影響力のある選手がやるからこそ効果がある、との責任感もあったのだろう。今でも「本業にだけ集中してろ」と批判する人はいるが、彼女は行動したからこそテニス界を変えることができた。これは彼女がいくら本業に集中し、試合に勝ち続けたところで決して成し遂げられなかった事だ。

 

 

 だから逆に、本業に集中しているだけでは駄目だ、ということなのかもしれない。これは別に彼らのような特殊な職業だけでなく、普通のサラリーマンにも言えることだろう。真面目に働き、その後で居酒屋で愚痴を言っているだけでは駄目で、そのために行動しなければ何も変わらない。

 

 映画の後半は、物語のメインである男子テニスの往年の名選手との試合の様子が描かれる。それまであまりテニスのシーンがなかったのはこのためだろうと思っていたのだが、この試合もあまり劇的に盛り上げようとする様子はなく、ただ淡々と描かれるだけだった。

 

 正直少し拍子抜けしてしまったのだが、この映画は主人公の女性の地位向上のための戦いを描くもので、熱血スポーツ映画をやるつもりはなかったということだろう。主人公自身が言っていたように、対戦相手の選手は男性的なものを示すピエロでしかなく、この試合はそれと対峙する彼女の戦いを象徴的に示しているにすぎない。

 

 主人公の戦いだけでなく、対戦相手の男性選手の妻や子供との問題、ギャンブル中毒なども描かれて、単なるフェミニズム映画にしない深みのあるものとなっている。また、主人公は女性差別とは戦ったが、同性愛については(この時は)公表せず隠したままにしている。そこに彼女の人間味が感じられるのもいい。何が何でも世の中と戦わなければならないわけではなく、自分が行動したいと思った時に無理せずやればよい、ということも教えてくれているかのようだ。

 

 「女は台所と寝室にいるだけでいい」などと著名人が公然とテレビで言い放つなど、当時の女性蔑視に対する世間の許容度に唖然としてしまうシーンがいくつもあった。なかでも、主人公の試合の解説を行なった女性選手に対して、背の高い男性司会者が彼女の首に手をまわし、背後から抱きかかえるようにずっとインタビューしていたシーンは吐き気がするほど気色悪かった。当時の男性の、女性に対する考え方や態度が一目瞭然で分かってしまうようなシーンだった。

 

スタッフ/キャスト

監督 ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス

 

脚本 サイモン・ボーファイ

 

製作 クリスチャン・コルソン/ダニー・ボイル/ロバート・グラフ

 

出演 エマ・ストーン/スティーブ・カレル/アンドレア・ライズブロー/サラ・シルヴァーマン/ビル・プルマン/アラン・カミング/エリザベス・シュー/オースティン・ストウェル/ジェシカ・マクナミー/ナタリー・モラレス/エリック・クリスチャン・オルセン/ルイス・プルマン/ウォレス・ランガム/フレッド・アーミセン

 

バトル・オブ・ザ・セクシーズ - Wikipedia

 

 

登場する人物

ビリー・ジーン・キング/ボビー・リッグス/ジャック・クレイマー/マーガレット・コート /ロージー・カザルス/ジュリー・ヘルドマン/ジュディ・テガート/ケリー・レイド/ナンシー・リッチー

 

 

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