★★★★☆
あらすじ
米国の電力事業草創期に起きたトーマス・エジソン陣営とジョージ・ウェスティングハウス、二コラ・テスラ陣営の争いを描く。事実に基づいた映画。原題は「The Current War」。
感想
直流送電を推すエジソン陣営と交流送電を推すウェスティングハウス陣営の電力事業をめぐる争いが描かれていく。序盤は若干状況が分かりづらかったが、次第に把握できるようになった。
自分の名声を最大限に活用し、周囲の忠告も聞かず、汚い手を使ってでも敵に勝とうとするエジソンの執念はすごかった。インフラ事業を手中に収めればデカいというのもあるだろうが、何よりも我が強いからなのだろう。社会は天才である自分の思い通りになるべきだ、という強烈な自負を感じる。
エジソンが敵を陥れるために行った印象操作のひとつに、交流を使う死刑用の電気椅子の開発がある。映画の演出なのかもしれないが、この電気椅子の使用についての議論が、処刑予定の死刑囚の前で行われていたのには驚いた。もし自分が彼の立場だったら、じっと聞いてなんかいられず卒倒してしまいそうだ。
しかし自分の知名度を生かし、新聞記者を使って敵陣営を煽るエジソンの姿は、もし彼が現代に生まれていたらSNS界の人気者になっていただろうなと想像させる。現在ツイッターを買収し、様々な騒動を引き起こしているイーロン・マスクは彼に似ているかもしれない。エジソンのライバルだった人物にちなんだ社名を持つ「テスラ社」のCEOではあるが。
なりふり構わないエジソンに対して、あくまで正攻法で戦おうとしたウェスティングハウスは立派だった。彼が同じ穴の狢になって対抗していたら、見ていられない泥仕合になったはずだ。彼は彼で自分が正しいと思い、正しいものが勝つべきだという信念があった。
最終的にはウェスティングハウス側も綺麗ごとだけではやっていられなくなってしまったが、ついに電力戦争の勝敗は決する。その後に両者が初めて対面し、穏やかに会話を交わすラストシーンは印象的だった。実際はどうだったのか分からないが、少なくともこの映画の中では両者がお金のためだけにやっていたわけではないからこそ、こんなシーンになったような気がする。
毀誉褒貶のあるエジソンのクセの強い人物像がしっかりと描かれている映画だ。そしてなんだかんだ言っても、やっぱりエジソンはすごい人物だと再認識させられる映画でもあった。
スタッフ/キャスト
監督 アルフォンソ・ゴメス=レホン
製作 ティムール・ベクマンベトフ/ベイジル・イヴァニク
製作総指揮 マーティン・スコセッシ/スティーヴン・ザイリアン/ギャレット・バッシュ/マイケル・ミトニック/アン・ロアク/ミシェル・ウォーコフ/アダム・アクランド/デヴィッド・C・グラッサー/デヴィッド・ハッキン/ボブ・ヤーリ/アダム・シドマン
製作総指揮/出演 ベネディクト・カンバーバッチ
出演 マイケル・シャノン/キャサリン・ウォーターストン/トム・ホランド/タペンス・ミドルトン/マシュー・マクファディン/ニコラス・ホルト/タペンス・ミドルトン/デイミアン・モロニー
撮影 チョン・ジョンフン
エジソンズ・ゲーム 【字幕版】 | 映画 | 無料動画GYAO!
登場する人物
トーマス・エジソン/ジョージ・ウェスティングハウス/ニコラ・テスラ/ジョン・モルガン/ウィリアム・ケムラー