★★★★☆
あらすじ
FBI実習生の女性は、進行中の連続猟奇殺人事件のヒントを得るため、収監されている凶悪な連続殺人犯、レクター博士と接見するよう命じられる。
アカデミー賞作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞。原題は「The Silence of the Lambs」。118分。
感想
FBI実習生の主人公が、危険な囚人であるレクター博士と面会してヒントを得ることで、進行中の連続猟奇殺人事件を解決しようとする物語だ。まずは、危険な香りを醸し出すレクター博士に引き込まれる。演じるアンソニー・ホプキンスが迫真の演技だ。
凶悪犯だからと露悪的に振る舞うのではなく、知的で物静かな佇まいをすることで、別の角度からやって来る怖さがある。最初の登場で、主人公を棒立ちで迎えたシーンは、何者なのか分からない底知れぬ薄気味悪さがあった。
囚人と捜査官の関係なんて、本来は圧倒的に捜査官が優位なはずだ。しかし気が付けば主人公は、博士に自分の過去やトラウマを赤裸々に語らされている。博士に呑まれてしまいそうになりながらも主人公は必死に持ちこたえ、事件解決のヒントを引き出そうとしている。新人ながらも彼女のガッツとハートの強さを感じる場面だ。
今回久しぶりにこの映画を見直したのだが、この映画の影響を受けて作られた映画をその後にたくさん見てきたせいで、今となってはインパクトがだいぶ薄まってしまっている。レクター博士とのやり取りももっとあったような気がしたが、これだけだったかと意外な気もした。
だが、単なる猟奇事件、単なる謎解きにしないで、主人公のトラウマ克服の成長物語にしているところが巧みだ。主人公がレクター博士に教えを乞うたり、上司の期待になんとか応えようとする様子は、父親との関係を想起させる。また、無謀にも単身で犯人の家に乗り込んで戦い、被害者を救おうとした姿は、羊を助けることが出来なかった幼少時の彼女の姿と重なった。これらの体験を通して主人公は成長していく。
レクター博士の静かで吸い込まれそうな恐ろしさと、初々しい主人公の勇敢に立ち向かう姿が強く印象に残る映画だ。イヤな後味の残るラストには、落ち着かない気分にさせられる。
スタッフ/キャスト
監督 ジョナサン・デミ
脚本 テッド・タリー
出演 ジョディ・フォスター
スコット・グレン/テッド・レヴィン/アンソニー・ヒールド/ケイシー・レモンズ/ブルック・スミス/ダイアン・ベイカー/フランキー・R・フェイソン/ロジャー・コーマン/トレイシー・ウォルター/チャールズ・ネイピア/ダン・バトラー/クリス・アイザック/ケネス・ウット/ジョージ・A・ロメロ*
*ノンクレジット
撮影 タク・フジモト
関連する作品
次作 シリーズ第2作
この作品が登場する作品