★★★★☆
あらすじ
夫の浮気で心を病んだ妻は、息子の性器を切り取ってしまう。
キム・ギドク監督。韓国映画。89分。
感想
母親が息子の性器を切り取ってしまったことから始まる物語だ。インパクトたっぷりで、先の読めないストーリーだが、これをまったくのセリフなしで展開するのだから挑戦的だ。その試みはおおよそ成功していて、大まかなストーリーは掴めるようになっている。
ただ、父親がネット情報を調べるシーンで英語サイトが出てくるので、そこは多少の語学力がないと辛いかもしれない。見終わった後に、もう一度そのシーンの英文を確認してしまった。
母親が父親の浮気で息子の性器を切り取るのは「なんで?」と思わなくもないが、父親と同じ血を分けた息子を同一視したのだろう。その他にも、父親が息子を気の毒に思う一方で同じ男としてライバル視したり、息子は母親を女として見たりと、家族間の入り組んだ複雑な感情が次々と露わになっていく。
異常に見えるが、きっとどんな家族でも彼らと同じような感情が心の深奥では渦巻いているのだろう。気付かずにいられるのは幸せだが、無自覚なそれが、家族の問題をややこしくしている原因だったりすることもある。
次から次へと異常な出来事が続いて圧倒されるが、やや分かりにくいのは父親の挙動だ。自分のせいで息子がとんでもない目に遭ったと自責の念に駆られるのは分かる。だが、「目には目を」的に自らを罰しようとするのは解せない。その発想がすでに修行僧みたいで、もはや常人ではないような気もする。
そして、そんな自暴自棄の時に移植を考えるだろうかと疑問でもある。その後にいろいろとネットで調べたりしているので、それをいつ思いついたのか判然としないところがある。
父親と不倫していた女は、事件に巻き込まれた挙句に息子にも利用され、変わり果てていく。息子と同じくらいにハードモードだ。浮気だけでここまで酷い目に遭うのは気の毒に思える。
母親役のイ・ウヌが一人二役で彼女も演じているが、気付かないくらい見事に演じ分けているのがすごい。そして、二人に対する息子の反応が、男にとって女は欲望の面からみれば皆同じに見えるが、心理的な面から見れば違うということを示してもいる。
ドロドロとした話が続くが、息子の移植された性器がちゃんと機能するか、父親と医者が真面目な顔で見守るシーンや、息子が切り取られた性器を持って走るシーンなどは、コミカルだ。戻ってきた母親が、移植された息子の性器を見て、それが父親のものだとすぐに気付くのも面白ポイントかもしれない。
なんて話だ、と思いながらも、異常事態の中で次に何が起きるのかと目が離せない。冷静に考えれば、男が浮気しなければこんなことにならなかったわけだが、分かっていてもやめられないのが人間の悲しい性だ。そのカルマを息子が背負っていくことになった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作/撮影/編集 キム・ギドク
出演 チョ・ジェヒョン/ソ・ヨンジュ/イ・ウヌ

