★★★☆☆
あらすじ
米軍基地のある農村の人々。
感想
米軍の問題を扱った映画のようにみえるが、実際にはそんなに米軍は関係ないようにみえる。米軍基地のある貧しい村で暮らす人々の人間模様といったところで、いくつかのエピソードが同時に展開されていく。ただ、どれもあまり共感できないというか、良く分からないというのが素直な感想。
まずは幼い頃に事故で失明したが、米軍の病院で手術を受ければ治ると言われている18歳の少女に、治すなと止める青年。治るものを治さずにそのままでいろ、と言うのはかなり残酷だ。この青年は言いたいことがあってもいつも何も言わずに黙ったままで、見ていてもどかしかった。それに、ついに堪忍袋の緒が切れた時の切れ方も、そんな方向に行くの?と思うような切れ方。
それから、行方知れずの米兵の父親を持つ青年の、母親に対する距離感もよく分からなかった。いつか米兵から連絡が来て、アメリカで一緒に過ごすと信じて続けている母親の姿にやるせないものを感じているのは分かるのだが、忘れさせるためにした行動がゾッとした。自分の母親にそんなことするのかと引いてしまった。
そして、そういう文化のない人間が見るとゾッとしてしまう、犬を育て食用の肉を売る犬商人の男。でもそういう文化の国であればそんな特別な存在でもないだろうに、なんとなく疎まれた扱いをされているのが不可解な気がした。でもきっと彼は米軍的なものを象徴しているのだろう。血の匂いだったり、いざとなると暴力的な所だったり。
少し歪んでいるように見える村の人たちを見ていると、直接的ではないが、やはり米軍の存在が彼らに影響を与えているような気がしてくる。望んだわけでもないのに彼らの都合で居座っている米軍。気にしてないつもりでも無意識下で常にその存在を感じていて、無言の圧力を受けている。それに対する反発だったりあきらめの感情だったりが、彼らの行動にバイアスを加えているのかもしれない。
後半になればなるほど、そんな彼らの行動がどんどんと理解できなくなっていく。そんなわけで終盤はダレてしまって、とても映画が長く感じた。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 キム・ギドク
出演 ヤン・ドングン/パン・ミンジョン/キム・ヨンミン/チョ・ジェヒョン/パン・ウンジン/ミョン・ゲナム/Mitch Mahlum/ヤン・スンビョン