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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「イザベラ」 2006

イザベラ [DVD]

★★★☆☆

 

あらすじ

 中国返還間近のマカオ。突然、娘だと名乗る若い女が現れて戸惑う汚職警官。

  

感想

 汚職がバレそうになり焦る警官の前に娘だと名乗る女が現れ、共に過ごすうちに警官の心境が変化していくという物語。これに中国返還前後のマカオの社会情勢の変化を絡めつつ描かれていく。

 

 まず、二人の出会いがなかなかのインパクトだった。そして観ているこちらはとんでもないタブーを犯してしまったなと衝撃を受けているのに、当人たちはちょっと驚いたぐらいのリアクションしかせず、そこまで気にしていない事にだいぶ困惑してしまった。このタブーは万国共通だと思うのだが、地域によって深刻度には濃淡があり。4千年もの歴史がある中国ともなれば、彼らのしたことなどそんなに動じるほどの事ではないと見なされるのかもしれない。確かに中国はもっとえげつないことをたくさんしていそうだ。

 

 

 本来ならこのテーマだけで映画一本を撮れてしまいそうなのだが、この映画ではそれを軽く受け流す。そしてそのままその後の、行き場がなく男に頼らざるを得ない女と、負い目から仕方なく面倒を見る男、この二人の奇妙な関係が描かれていく。最初はギクシャクし冷ややかだった二人の関係が、やがては心を通わし、温かなものになっていく。その過程が繊細に丁寧に表現されており、二人の心境が変化していく様子がよく分かる。

 

 登場人物たちは言葉少なで、こだわりを感じる映像のバックには印象的な南米風の音楽が流れる香港映画。となるとどうしてもウォン・カーウァイ監督の映画とよく似ているなと思ってしまう。この映画の雰囲気だと「花様年華」か。

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 汚職警官役のチャップマン・トウは丸坊主の小太りという外観で、一見すると三枚目キャラっぽいのだが、男前な演技のせいで全然似てないのにまるでウォン・カーウァイ映画に出てくるトニー・レオンのように見えてきた。

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 娘と名乗る若い女役のイザベラ・リョンは美人で目力があって惹きつけられるし、 時おり時間軸を入れる話の構成もよく出来ている。安易なパクリではないウォン・カーウァイ映画的雰囲気も悪くはないのだが、少し冗長だしどこかに物足りなさを感じてしまう。軽く流されてしまって心に引っかかっていたタブーの問題には結論が出るのだが、そこからさらに二人の関係を踏み込んで描いた方が良かったのかもしれない。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 パン・ホーチョン

 

脚本/出演 デレク・ツァン

 

製作/出演 チャップマン・トウ

 

出演 イザベラ・リョン/JJ・ジャー/アンソニー・ウォン/スティーブン・チョン /ジョシー・ホー /ショーン・ユー 

 

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イザベラ (映画) - Wikipedia

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