★★★★☆
あらすじ
西部開拓時代、アメリカの極寒地帯で毛皮ハンター隊の案内を務めていた地元の罠猟師は、クマに襲われ瀕死の状態でその場に置き去りにされてしまう。
実在した罠猟師ヒュー・グラスをモデルとした物語。アカデミー賞監督賞、主演男優賞、撮影賞。
感想
極寒の地に置き去りにされた主人公がサバイバルする姿が描かれる。荒野に置き去りにされるだけでも相当しんどいが、その上瀕死の状態なのでマイナスからのスタートどころか、もはやアウトだと言っても過言ではない。絶体絶命の状態だ。
そんな状態に主人公を追いやったクマに襲われるシーンは凄まじい。執拗に何度も襲い掛かってくるクマの姿には震えた。応戦している間にどんどんと傷が増えていき、これではいくら必死だったとしても途中で心が折れてしまいそうだ。それでも最後まであきらめなかった主人公だからこそ、その後の物語には説得力がある。
仲間に発見されて介抱され、担架で帰路に着いた主人公だが、険しい道のりに道中で放棄されることになる。映画「ザ・ビーチ」を思い出すつらい展開だが、それでも最初はちゃんと連れて帰ろうとしてくれていたわけだし、最期を看取り埋葬するために三人も残してくれたのだから、最大限の誠意は尽くしてくれたと言えるだろう。正直なところ、この厚遇ぶりには驚いた。
だが一緒に残ったメンバーが悪かった。そのうちの一人が主人公の息子を殺し、もう一人の若者を脅しつけ、主人公を見殺しにしてさっさと立ち去ってしまった。せめて安楽死させてやれよと思ってしまったが、ここから主人公の信じられないほどの復活劇が始まる。もしかしたら主人公の中でもあきらめのようなものが生じていたのかもしれないが、息子を目の前で殺された怒りが、生への執念を生んだのだろう。
何度も窮地をくぐり抜け、主人公はついに仲間に発見される。砦に収容され、さすがにしばらく休養するのかと思いきや、そのまま復讐を果たすために出掛けるのはすごい。その執念に圧倒される。
クライマックスとなる復讐シーンは、同行した隊長の軽率さと、見事な策を打ちながらもそこで仕留めきれなかった主人公のグダグダぶりが気になったが、相手も必死だから仕方がないのかもしれない。主人公の執念と共に、相手の何が何でも絶対に生き残るという強い信念がしっかりと描かれている。とどめを刺さずに川に流す最後のシーンは工場の流れ作業みたいで少し面白かったが、きれいにまとまった復讐劇だった。
これが実話に基づいているというからすごいが、主人公の生への凄まじい執念と、美しくも厳しい極寒の大自然の映像が強く心に刻まれる映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
製作総指揮 ブレット・ラトナー
出演 レオナルド・ディカプリオ/トム・ハーディ/ドーナル・グリーソン/ウィル・ポールター/ポール・アンダーソン/ルーカス・ハース/ブレンダン・フレッチャー
音楽 坂本龍一/アルヴァ・ノト
撮影 エマニュエル・ルベツキ
登場する人物
ヒュー・グラス/ジム・ブリッジャー
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