★★★☆☆
あらすじ
酒場の揉め事からロシア人マフィアを殺すも正当防衛で釈放された敬虔なカトリック教徒の双子は、その後、神の名のもとに次々とマフィアを襲撃するようになる。
原題は「The Boondock Saints」。
感想
「処刑人」となった双子の兄弟の物語だ。そのきっかけとなったロシア系マフィアの事件は、途中経過を見せずにまず死体を見せ、その後にそれまでに何があったのかを見せる時系列をいじる演出で面白かった。
ただ、そんな演出が二回三回と続くので段々と飽きてくる。そして正当防衛で無罪放免となった兄弟が味を占め、当然のように次の「処刑」を行なおうとする展開には違和感を覚えてしまった。
水戸黄門のように相手の悪事を丹念に紹介した後に懲らしめるのならまだ納得できるのだが、ただ相手がマフィアというだけで無条件で殺そうとするので戸惑ってしまう。確かにマフィアは説明するまでもなく社会悪なのかもしれないが、心理的にはちょっと待ってくれとなる。これでは非情な殺し屋だ。
彼らを突き動かすのは、敬虔なカトリック教徒であることを背景とした正義感だ。ただ、一般人を巻き込んだり、ふざけて楽しんでいるような素振りもあるので、都合よく神様を使っているだけにしか見えない。共感できない。
とはいえ、謎の壺を買わされたり一家離散したりして、宗教に利用されるよりはいいのかもしれない。宗教をうまく活用すれば、善行だろうが悪行だろうが関係なく、やりたいことを躊躇うことなくできるようになる。
アクションは見ごたえがあるし、意味なくウィレム・デフォーが女装したりするなど面白いシーンもいくつかある。ただ、刑事が主人公らにあっさりと感化されて職務放棄するなど、全体的としては表面的で浅はかなものを感じてしまう映画だ。正義とは?と問いかけるラストも今さら感があり、それは中盤で処理しておいてほしかった。
正義が暴走した私人逮捕系ユーチューバーを見てしまった時のような居たたまれなさがずっとあった。「処刑」前に聖書の一説を唱えて気取って見せるところも、自己顕示欲が見え隠れして子供っぽい。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 トロイ・ダフィー
出演 ウィレム・デフォー/ショーン・パトリック・フラナリー/ノーマン・リーダス/ビリー・コノリー/リチャード・フィッツパトリック/カーロ・ロータ/ロン・ジェレミー
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