★★★★☆
あらすじ
彼氏にいじめられていた同級生を助けたことで言葉を交わすようになった女子高生は、彼の宝物を見せてもらう約束をする。
感想
淀んだ川のそばにある高校に通う女子高生が主人公だ。彼氏にいじめられていた同級生男子を助けたことで、日常に変化が訪れる。
主人公と同級生たちによる群像劇で、無邪気でもあり大人びてもいる彼らの心の闇が描かれていく。主人公たちが、誰と会ってもあまり本音を喋らないのが印象的だ。そしてそれを覆い隠すかのように空騒ぎをしている。思春期の若者が騒々しいのはエネルギーを持て余しているからだと思っていたが、もしかしたらそれだけではなく、ナイーブな本心を誤魔化すためでもあるのかもしれない。
主人公らが隠し持つ不安や恐れ、嘘や悪意は、淀んだ川べりのように堆積し、少しずつ現実を歪めていく。そしてそれがある時、決定的な惨劇を生むこともある。そんなしんどい世界だが、戦場を生き延びるように力強く生きていくしかない。
決して明るくはないが、ポジティブな気持ちになれる物語だ。モノローグには詩的な響きがあり、自分の心を冷静に探る主人公の言葉は心に刺さる。
ちなみに実写映画の鑑賞後にこのマンガを手に取ったが、映画はほぼ原作通りであることが分かった。マンガの実写化作品は、改悪されて原作を台無しにしたと文句を言われることもあるが、忠実なら忠実で「原作そのままかよ」と思ってしまわないこともない。現金なものだが、作る方は大変だ。
著者
岡崎京子
登場する作品
「THE BELOVED (Voices for THREE HEADS) 」 William Gibson
関連する作品
映画化作品

