★★★★☆
あらすじ
自分の恋人にいじめられていた男子を助けたことで、親しく言葉を交わすようになった女子高生。
二階堂ふみ、吉沢亮ら出演、行定勲監督。岡崎京子の漫画が原作。118分。
感想
主人公の女子高生が、いじめられていた男子を助けるところから物語は始まる。裸にしてロッカーに閉じ込め、そのまま放置する過酷ないじめだ。だがそのいじめられている同級生が、そこそこ女子に人気があり、さらには恋人までいることに驚く。
主人公とその周囲の高校生たちの群像劇だ。みな普通に恋人がいて、デートに出掛けたり泊まったりしているし、タレント活動をする者、援助交際やドラッグの売買に手を染める者もいる。いかにも都会の高校生たちだ。いくつもの顔を持つことができる。いじめもその中の一つに過ぎないのだろう。
やることは大人びている彼らだが、子どもらしい部分もまだ残っている。両親からの愛に飢えていたり、呼ばれるとうれしくて飛んで行ったり、恋に恋してしまったりと幼さを見せる。いじめを助けた主人公のように、それが良い方向に働くこともある。
そして流されやすい面があるのも特徴だろう。主人公も同級生も好きでもない相手と付き合っているし、恋人も女友達に誘われると簡単に応じてしまう。これは相手を傷つけたくないという優しさからきているものなのかもしれない。
大人と子どもの間で彼らは揺れる。だがなんとか両面のバランスを保ち、体裁を取り繕っている。誰もが通る道だ。だが、都会ゆえにか、生じたズレは取り返しのつかないほど大きく広がり、最終的には事件にまで発展してしまった。
終盤に、主人公がインタビューで答えていた言葉が心に残る。心を殺して何も感じない大人になるのではなく、子どものような純粋な心でいろんなものを感じ、魂を震わせながら、それでもたくましく生きていく大人になる。そうでなければ生きてる意味なんてない。それが死者との違いだ。
終盤は少しダレたが、エンディングで小沢健二の曲が流れて持ち直した。照明や小道具、ファッションなど、細部まで手を抜かない映像と、役者陣の熱演が光る青春映画だ。
スタッフ/キャスト
監督 行定勲
脚本 瀬戸山美咲
原作 リバーズ・エッジ 愛蔵版
出演 二階堂ふみ/吉沢亮/上杉柊平/SUMIRE/土居志央梨/森川葵/西田尚美
音楽 世武裕子
撮影 槇憲治
