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「山椒魚」 1948

山椒魚(新潮文庫)

★★★☆☆

 

あらすじ

 体が大きくなりすぎて、自分の住処から出られなくなった山椒魚の悲哀を描いた表題作他、全12編を収録した短編集。

 

感想

 どの短編もちゃんとしたオチがある終わり方でなく、深く余韻を残すものとなっている。だがしっかりと考え抜かれたうえで構成し、組み立てられていることが窺える内容だ。適当にアドリブで書き散らしているわけではない。

 

 また、全編を通して登場人物たちが喋る方言がバラエティに富んでいるのが印象的だった。巻末の解説にもあったが、著者にこだわりがあるのか、忠実に方言を文字にしているので、逆に何と言っているのかよく分からないシーンもあるくらいだった。日本各地のいろんな場所を舞台にしている、ということでもある。

 

 

 代表作と言われている表題作の「山椒魚」は、最初はするっと読んでしまい、いまいちピンと来なかったが、再読して見たらユーモアだけでなく、風刺やペーソスが込められた比喩的な物語であることに気付いた。

 

 一時期もてはやされた「ゆでガエル理論」とよく似ているかもしれない。案外、日本が再浮上するために過去にしがみつくのを止めようとする時に、この短編が注目されることがあるのかも、と思ったりした。日本をこの山椒魚になぞらえて。

 

 いくつか気に入った短編があったが、中でも単なる鷲のバードウォッチングをするだけの話から、一つの偶然の出会いをきっかけに主人公の空想の翼が大きく広がり、ダイナミックな展開を見せる「大空の鷲」が面白かった。

 

著者

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山椒魚 (小説) - Wikipedia

 

 

この作品が登場する作品

「山椒魚」

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「掛持ち」

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