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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「サンショウウオ戦争」 1936

サンショウウオ戦争

★★★☆☆

 

あらすじ

  赤道直下の島で発見されたオオサンショウウオは、真珠を取ったり、海中での工事に活用されていたが、急激に進化し、また増殖もし、やがて人間と対立するようになる。

 

感想

 内容とは関係ないが、まず和田誠による本の装幀が可愛らしくて良い。これまではなんとなく彼のイラストには古臭いイメージを持っていたが、こうやって改めて見てみると素敵だ。

Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集

Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集

 

 

 人間のように、他の動物にも高度な知能を持ち、発達した文明を築く可能性があるのではないだろうか? というところからスタートしたであろう小説。確かにあり得ない話ではないのかもとは思うのだが、でもなぜそれがよりによって山椒魚なの?と不思議だったのだが、ちゃんとした理由があるようだ。かつてヨーロッパで発見された山椒魚の化石が人間の化石と間違えられていたことがあり、そこから着想を得たという事らしい。

 

オオサンショウウオ ぬいぐるみ 63cm

オオサンショウウオ ぬいぐるみ 63cm

 

  グロテスクな見た目だが、でもこの生き物が2本足で立って歩くところを想像するとどことなくユーモラスで、なかなかいいチョイスだ。

 

 物語はある船長と山椒魚の出会いから始まる。そのままこの船長を中心として話が展開されていくのかと思いきや、そうではなく様々な登場人物たちが表れては、山椒魚とのエピソードが紹介され、そして消えていくという断片的な物語。途中には新聞記事や学界や産業界の様子、伝聞なども挿入されており、それらの情報を組み合わせると、山椒魚と人間の関係が次第に変化していく様子のイメージが出来上がっていくという形式。

 

 面白いのだが、少しペースをつかみづらい部分もある。ただそれらもどこか現実社会への皮肉や批判が込められているようでもあり、また、エピソード間の空白にも色々と想像力を掻き立てるものがあって、なかなか興味深い。何度か、これは第2次大戦前の作品なんだよな、と確認してしまうような、著者の先見性が感じられる箇所もあった。

 

 小さな島の湖にいた山椒魚を、人間が連れ去り大海に放ったことで急激な進化が始まったというのもどことなく説得力のある設定だし、最初は労働力として海を埋め立て、人間が住むための陸を作らせたというのも分かるような気がする。やがては大量に繁殖した彼らを取引したり、管理・監督するための一大産業が出来上がっていくし、一方では言葉を喋り、論文すらも書く彼らに権利を与えるべきかの議論が起きる。彼らの登場によって起こり得そうな出来事が次々と挙げられていて、よく考えられているなと感心させられる。

 

 人間の意図によって陸地を作り続けた結果、今度は逆に山椒魚の住む海が無くなっていき、最終的には両者の衝突が始まるという皮肉な結末。ただ、それまで一貫して声高に何かを主張するでもなく、意思表示も見せなかった山椒魚が突然、徹底的な行動に出たのには少し違和感を感じた。意味深な最終章からしても、実は彼らの背後には人間がいると考えるほうが自然なのかもしれない。

 

 人間との交渉の場にやってきたのも、山椒魚が全権を委任したという人間の代理人だったので、権利を主張する山椒魚の存在は、実際には確認できていない。善良で文句も言わずに黙々と働き続ける勤勉な山椒魚を、己の野望のために誰か人間が裏で操っていると考えるといろいろと合点がいく。そして、それが何を比喩しているのか、いろいろと想像力が広がっていく。

 

著者 カレル・チャペック

 

サンショウウオ戦争

サンショウウオ戦争

 

山椒魚戦争 - Wikipedia

 

 

登場する作品

Trader Horn DVD 1931

Annie Laurie

千夜一夜物語(全11巻セット)―バートン版 (ちくま文庫)

オッフェンバック 歌劇《ホフマン物語》全曲 [DVD]

歌劇《ホフマン物語》: ホフマンの舟歌

 

 

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