★★★☆☆
あらすじ
核衛星の墜落が迫る近未来。あてのない旅をしていた女は、たまたま手に入れた大金を奪った男を追い、世界中を駆け巡る。
ウィリアム・ハート、サム・ニール、笠智衆ら出演、ヴィム・ヴェンダース監督。1991年の「夢の涯てまでも」のディレクターズカット版。英題は「Until the End of the World」。288分。
感想
核衛星の墜落が迫る近未来に、ヨーロッパ、アジア、アメリカ、オーストラリアと、世界中を旅する女が主人公だ。
近未来が舞台なので、SF的なガジェットや未来的なデザインの車などが登場する。だが画面全体が未来感に包まれているわけではなく、現代の風景に未来的なものをいくつか配置しただけの雑な演出なのが面白い。
使いづらそうな公衆テレビ電話や真四角のデカいブラウン管のモニターなどが登場し、いかにも90年代初頭に考えた未来の風景だ。近未来の設定だが舞台は1999年で、今となっては過去の話になっているのも不思議な感覚になる。
前半は主人公が男を追い、途中からは一緒になって世界中を旅する。もうちょっと各地の風景を見せて欲しかったが、旅の雰囲気が味わえる。日本パートでは、パチンコ屋やカプセルホテルなど、いかにも外国人が面白がりそうな場所が登場する。
後半は男の両親がいるオーストラリアにたどり着き、そこで視覚や夢の研究をする様子が描かれるようになる。動き続けた前半とは打って変わってどっしりと腰を据えた展開で、やや停滞感があった。
これらは過去をめぐる物語なのだろう。移動し続ける旅は、一つ所にとどまっているよりも過去を強く意識する。ずっと同じところにいればあまり考えないが、動いていれば一週間前はどこにいて、一時間前はどこにいた、と振り返ることが多くなる。また、視覚に送り込もうとしていた映像は当然過去に撮られたものだし、夢で見るのも最終的には過去の想い出になる。すべてのベクトルが過去を向いている。
過去に囚われてしまうと動けなくなってしまう。そこから抜け出すには、即興で音楽を奏でるように、「今」にフォーカスすることだ。また物語を紡いだり読んだりすることで、自分を客観視することも助けになる。世界の終わりだと思うとつい過去ばかりを振り返ってしまうが、今に重点を置き、そこから未来を見ることで希望も湧いてくる。
5時間の長丁場で進行はまったりとしており、展開的にも後半はダレたが、ラストシーンは妙に明るく幸福感があった。音楽も良くて、余韻が心地よい映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ヴィム・ヴェンダース
出演 ウィリアム・ハート/ソルヴェーグ・ドマルタン/サム・ニール/ジャンヌ・モロー/リュディガー・フォーグラー/マックス・フォン・シドー/ロイス・チャイルズ/藤谷美和子/竹中直人/三宅邦子
音楽 グレーム・レヴェル
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