★★★☆☆
内容
人間の好き嫌いはどのような仕組みで決まるのかなど、「好き嫌い」について様々な角度から考察していく。
感想
誰もが日常的に話題にしているものだが、よく考えると「好き嫌い」というのはよく分からないものだ。急に好きになるものもあれば、次第に好きになるものもあるし、毎回好き嫌いが変わるものもあれば、好きだったものが突然嫌いになったりもする。そんななんとも掴みどころのない人の「好き嫌い」というものを、様々な観点から考察していく。
まずは食べ物の話から始まって、映画や音楽、アートの話題を取り上げつつ、好き嫌いに関する様々な研究の結果やその考察などが紹介されていく。最初に食べ物がトピックに選ばれたのは、誰にとっても身近なものだからだと思うが、いきなりややこしい話が多くて戸惑ってしまった。食べ物に関しては、もともと人類が食べられる物と食べてはいけない物にしか区別していなかったからなのかもしれない。長い人類の歴史の中で、贅沢にも食べ物に好き嫌いの感情を持てるようになったのは、食生活が豊かになったここ100年ほどの話でしかない。そして身近だからこそ、食べ物の話は複雑になってしまうのだろう。少し不安になってしまったが、その後の音楽や映画の話は普通に読みやすくて、楽しむことが出来た。
かつては「小集団で世界のあちこちに分散していた」大衆は「塊になって」出現し、「突如、目に見えるものになり」、以前は「社会という舞台の背景」にいたのに「今は舞台前方にしゃしゃり出て主要人物になった」。
p109 スペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセット 「大衆の反逆」(1930)の紹介
そして読んでいてつくづく感じるのは、大衆の趣味嗜好を調べるのにインターネットほど便利なものはないということだ。かつてはアンケートぐらいでしかそれを知ることは出来なかったが、今ではネットの履歴を調べれば、どこで動画を観るのを止めて次に何を観たか等までが分かってしまう。しかもアンケートであれば、回答者は自分を取り繕おうとして嘘をつく可能性があるが、ネットの行動履歴は嘘をつかない。高尚な顔をして「ショーシャンクの空に」がベスト、とか言ってるのに、いつもはお下劣なコメディ映画ばかりを観ている、なんてこともすぐにばれてしまう。
本書では、好きな音楽のジャンルと政治性には相関関係があるが、なぜかヘビメタに関しては政治性に偏りが見られない、など興味深い話がたくさん登場する。ただ読んでいるうちに次第に、好き嫌いとはそもそも何だ、そして今はそれについてのなんの話をしているのだ?と訳が分からなくなってくる。結局、「好き嫌い」というのは曖昧なもので、まだまだ謎ばかりということなのだろう。人々のネットでの行動履歴の解析が進むことによって、今後、急速に解明が進んでいくこれからの研究分野だといえそうだ。
著者
トム・ ヴァンダービルト
登場する作品
「Making Sense of Taste: Food and Philosophy (English Edition)(味覚の解明ー食べものと哲学
「The Omnivorous Mind: Our Evolving Relationship with Food (English Edition)(雑食性の心)」
「A Taste for War: The Culinary History of the Blue and the Gray(軍用食の味)」
一杯のおいしい紅茶-ジョージ・オーウェルのエッセイ (中公文庫)
「Taste Matters: Why We Like the Foods We Do (English Edition)(嗜好の謎)」
「ザ・ロッキング・ホース・ウィナー(1949)」 映画
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー (字幕版)
オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式 [DVD]
The Best Short Stories of 1915 And the Yearbook of the American Short Story (English Edition)(アメリカ短編小説傑作選 一九一五年)」
「アメリカ短編小説傑作選 一九二五年」 編纂 エドワード・オブライエン
「ザ・ポート・オブ・ミッシングガールズ(1928)」
「紅夢」
エンター・ザ・ボイド ディレクターズカット完全版 [DVD]
「The Flamethrowers (English Edition)(フレイムスロワーズ)」
ディスタンクシオン〈普及版〉I 〔社会的判断力批判〕 (ブルデュー・ライブラリー)
「芸術としての絵画」 リチャード・ウォルハイム
「趣味の基準について」 デヴィッド・ヒューム
「Not By Genes Alone: How Culture Transformed Human Evolution (English Edition)(進化は遺伝子に負うのみならず)」 ロバート・ボイド/ピーター・リチャーソン
「二枚舌(戯曲)」 ウィリアム・コングリーヴ
「SHAGGY DOG (1959)(ボクはむく犬)」
「Formal Theories of Mass Behavior(大衆行動の公式理論)」 William McPhee(ウィリアム・マクフィー)
「Our Cats and All About Them Their Varieties Habits and Management and for Show the Standard of Excellence and Beauty Described and Pictured (English Edition)(われらが猫たちと、そのすべて)」
「ソム(Somm ソム)」