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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」 1999

文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)

★★★★☆

 

内容

 我々がごく普通と思っている人間の性の事柄は、動物界全体から見ると随分と奇妙に感じられる事ばかり。人類の性はなぜそのように奇妙に進化したのか、進化生物学者が考察する。単行本「セックスはなぜ楽しいか」から改題。

 

感想

 自然界の生存のための進化の競争は、異なる種の間だけでなく、同一の種の男女間でも行われているという話が面白かった。どの生物でも男女どちらが自分たちの遺伝子を継ぐ子供を育てるのかという駆け引きがある。

 

 生まれてすぐに一人で生きていける種であれば、子供が生まれたらすぐに男女ともに新たな相手を探しに行けるが、子育てが必要な種ではどちらかが面倒を見ないと労力をかけてせっかく生まれた子供が死んでしまう。そこで男女間で駆け引きが行われ、片親だったり、両親だったりで面倒を見ることに落ち着いていく。意外と子育てに対する男女のコストやリスクがちゃんと考慮されて決まっているのが面白い。

 

 

 カマキリのオスは、交尾をした後にメスに食べられてしまうが、たくさんのメスと出会い交尾できる可能性が低い環境であれば、交尾した相手が確実に出産できるように、自らを栄養として与えて体力をつけさせるのは理にかなっている、という話はなるほどなと頷かせられた。遺伝子を確実に残すためには様々な戦略があるということだ。

 

 同一種のオスとメスが協力し合って生き延びようとしている訳ではなく、その中でも個々が最適な戦略を取るために相手を出し抜こうとしているというのはなかなかにシビアな世界だ。男女がつがいとなって仲良く暮らしているように見える種であっても、男女の利害関係の調整の結果そうなっただけだと思うと、夢がなくて泣けてくる。

 

 当然人間も男女間での駆け引きが同様にある。それを考慮に入れながら、男はなぜ授乳しないのかとか、女は一定年齢になるとなぜ子供を産めなくなるのか、などが考察されていく。雑学的なネタやジョークになりそうな話や、時と場所を間違えて使用すれば問題発言になってしまいそうな話など興味深い話の連続だった。

 

 今後人類が滅びず続いていくとしたら、人間の性はどのように変化するのだろうと色々考えてしまった。

 

著者

ジャレド・ダイアモンド

 

文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)

文庫 人間の性はなぜ奇妙に進化したのか (草思社文庫)

 

 

 

登場する作品

種の起源(上) (光文社古典新訳文庫)

モーツァルト:歌劇《ドン・ジョヴァンニ》 K527[2DVDs]

詐欺師フェーリクス・クルルの告白〈上〉 (光文社古典新訳文庫)

 

 

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