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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「饗宴」 B.C.380頃

饗宴 (光文社古典新訳文庫)

★★★★☆

 

あらすじ

 15年ほど前の宴会で行われた、愛の神「エロス」についてのソクラテスらによる議論の内容を、友人たちに披露する男。

 

感想

 ソクラテスらによる愛の神「エロス」についての議論が展開される。なんとなく「エロス」の定義が曖昧で、それぞれがどういう意味で「エロス」という言葉を使っているのかが判然としなくなる時がある。

 

 ただそんな会話の様子を眺めていると、宴会の場でもあるし、今ならアニメのキャラについて熱く語る感覚なのかもしれないなと思えてきた。あるキャラに対する自分なりの思い入れを語りつつ、それを借りて自分の言いたいことも言っている。

 

 

 そしてこの議論の念頭にあるのが、男同士の愛(パイデラスティア)なのが興味深い。2500年も前は、そんな話を大っぴらに話し、本に残すほど普通だったのに、その後いつからタブーになったのかと不思議な気持ちになる。

 

 日本でも男色は普通にあったし、性的なものはなかったようだが、ギリシャの「パイデラスティア」と似た風習の「若衆宿」もあった。日本を愛し、伝統や文化を大事にしろと、ことさら声高に叫んでいる人たちは、こんな制度も復活させたいのかもしれない。

 

 皆がそれぞれの意見を述べた後、最後にプラトンが語り始める。エロスの働きとは、よいものを永遠に自分のものとすることで、様々な美を探し求めることでやがて普遍的なものにたどり着く。そんな彼の考えは、素直に納得できる。

 

 「美」に限らず、まずはたくさんのものに触れてみるということは特に大事だろう。少ないと偏ったり、歪んだものになりやすい。公正な判断が出来ず、だから陰謀論にハマったり、ヤバい宗教につかまったりする。色んなものをたくさん見てきたらすぐに怪しいと気付くのに、数が少ないと、初めて見たものを親と思い込んでしまう生まれたてのヒナ鳥のように、簡単に盲信してしまう。

 

 会話形式で進むので「哲学」の難解なイメージとは違ってとても読みやすく、頭にすんなりと入ってきた。遥か昔の、2500年も前の人たちの会話を聞いているのかと思うと、感動的でもある。それだけで「人類すごい」と感心してしまう。

 

 それから、すんなりと分かった気になっていた自分の読み方は浅かったかも、と気付かせてくれた巻末の充実した解説もありがたかった。

 

著者

プラトン

 

 中澤務

 

饗宴 - Wikipedia

 

 

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