★★★☆☆
内容
人々の行動に大きな影響を及ぼしている無意識。
感想
単純に見たものや聞いたことまでが、実際は無意識下で処理されていることに驚く。ある文章の単語の一文字を消去したテープを聞かせても、文章の前後から推測して聞き取ることができ、しかも本人は一文字消去されていたことに気づいていない。つまり、人間は物体や音を一旦、無意識下で情報処理したものを、見たもの、聞いたものとして認識しており、そのものをそのまま正確に認識しているわけではない。
同様に、選挙や恋人選びのような様々な行動にも無意識は影響を与えている。そしてそのことに当人が気づいていない。外見で投票したのに政策で判断したと思っていたり、声の低さで恋人を選んだのに、優しい人だから付き合ったと思っていたりする。実際は自分の取った行動に、後づけでその理由を考え出し整合性を持たせている。「楽しいから笑っているんじゃない、笑っているから楽しいんだ」みたいな。
無意識は、危険なものからは逃げる、仲間は助け円滑な関係を築く、のような生物の生存本能が基本になっているが、それに整合性を持たせる過程には楽観的な傾向があるようだ。身内に便宜を図っても公正にやったと信じ込めるし、業績が落ちたのは自分の能力のせいではなく、景気が悪いからだと本気で思っている。自分に都合の良い理由を探し出す。楽観的だから人類は進化を遂げたとも言える。
研究によれば、きわめて正確な自己像を持っている人は、軽度の鬱に陥っているか、自己評価の低さに悩んでいるか、またはその両方であることが多い。それに対して、過度に前向きな自己評価をしている人は、正常で健康であるという。
p326
無意識に実際の自分の行動なんて支配されているんだから、真面目な自己分析なんかしないで、理由もなくポジティブな解釈をしていたほうが人は幸せでいられるのかもしれない。
著者 レナード・ムロディナウ
登場する作品
プリンシピア―自然哲学の数学的原理bookcites.hatenadiary.com
On the Witness Stand; Essays on Psychology and Crime
「幽霊たちの戦い」アメリカ先住民の民話
火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)
ベスト・パートナーになるために―男は火星(マース)から、女は金星(ヴィーナス)からやってきた
「観相術」 ジャンバッティスタ・デッラ・ポルタ