★★★☆☆
あらすじ
無人島に取り残されてしまった少年たち。
感想
無人島を題材にした物語はたくさんあるが、この物語の特徴はサヴァイブするには苦労しない島だということ。果物が豊富にあるため、少年たちは食べ物に困ることはなく、気候も穏やかで生存するための苦労や努力は何一つする必要はない。それでも一応、皆で集まって決めごとを作り、仕事を割り当てるが、しばらくするとそれらは反故にされ、海で泳いだり浜辺で砂遊びをしたりと気ままに遊びだす始末。ある意味では楽園のような生活。
そしてもう一つは少年たちが、嬉しいと思わず逆立ちしてしまうぐらいの幼さだということ。だからやるべきことの重要性を理解せずついつい遊んでしまうし、喜んだり泣いたりの感情も表に出やすい。おかげで島の中で起きたことは、人類が進化する中でこういう段階があったんだろうなと想像させる。
狩りの興奮を皆に伝えたいがために身振り手振りを交えて再現しているうちに、やがてそれがある種の舞踊のようになったり、自らを鼓舞するために顔に塗料を塗りたくる。彼らが10代半ばの少年であれば、さすがにそんなことしないだろうと思ってしまうが、この年代であればスッと納得できる部分はある。
生きていくには困らない環境で、ひとりの幼い少年の無邪気な冒険心が次第に強くなっていき、やがては人類が築いてきた文明の空気に覆われていた島を、野蛮なものに変えてしまった。食べ物の力は恐ろしいとも言える。
島の様子の描写が分かりづらくて全体像がイマイチ掴めないのと、中盤まではあまり大きな動きがなくて少々だるく感じる部分があるが、前半に積み重ねてきた細かな描写によって大きな展開が起こる後半は読み応えがあった。
著者
ウィリアム・ゴールディング
登場する作品
ツバメ号とアマゾン号 (上) (岩波少年文庫ランサム・サーガ)
The Coral Island (Junior Classics)
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