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「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」 2022

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(字幕/吹替)

★★★★☆

 

あらすじ

 夫婦でコインランドリーを営む中国系移民の女性は、税監査の最中にマルチバースの存在を知る。

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 ミシェル・ヨー主演。アカデミー賞作品賞、監督賞、主演女優賞など7部門受賞。140分。

 

感想

 中国系移民の中年女性が主人公だ。コインランドリーを夫婦で経営し、仕事と家族の世話で忙しない朝の光景から物語は始まる。このアジア的騒々しさに続いて、そのままマルチバース展開が開始されるので、最初は事態を把握するのに苦労する。

 

 だがしばらくすると、並行世界を行き来するのは意識だけ、別の世界にいる自分の能力を使えるようになる、などの主な設定が徐々に分かってくる。別の世界に意識が行っている間の自分はどうなっているのだ?など若干の疑問は残るが、おおむねは納得できる。冷静に考えると突飛な設定だが、序盤のカオス的な慌ただしさが良い導入になっていることが分かる。すんなりと受け入れることが出来た。

 

 

 主人公は、マルチバースを脅かす存在に対抗するために並行世界に数多いる自分の中から選ばれたことを知る。だがその理由が、並行世界の中で最も人生を失敗しているから、だったのは皮肉だ。何もしなかったのでいくつもの選択肢が残されていて、他の世界にジャンプしやすい。

 

 もしあの時、別の選択をしていたら、その後の人生はどうなっていただろうと、主人公が人生を見つめ直す物語だ。だがそれ以外にも、過剰な努力を求められる移民の子の苦悩やすべてが分かった気になって襲われる虚無感、人生に必要な態度など、移民や人生、哲学にまつわる様々なテーマが盛り込まれている。

 

 それらを堅苦しくなく、下品なジョークから詩的なウォン・カーウァイ的世界観まで、硬軟織り交ぜて描かれる。靴を逆に履くなど、別の世界に行くためには変なことをしなければいけないという設定も面白かった。そして目まぐるしい展開の中、岩が二つ並ぶだけの終盤の静寂なシーンは印象的だ。

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 マルチバースを存分に活用し、様々な要素を放り込んだクレイジーな作品だが、なんだかんだでうまくまとまっている。そして最終的には普遍的な真理に落ち着き、親切は大事だ、と至極まともなメッセージを発しているのも良い。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート

 

製作 アンソニー・ルッソ/ジョー・ルッソ/マイク・ラロッカ/ジョナサン・ワン/ピーター・タム・リー

 

出演 ミシェル・ヨー/キー・ホイ・クァン/ステファニー・スー/ジェニー・スレイト/ハリー・シャム・ジュニア/ジェームズ・ホン/ジェイミー・リー・カーティス

 

音楽 サン・ラックス

 

編集 ポール・ロジャーズ

 

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス - Wikipedia

 

 

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