★★☆☆☆
あらすじ
125の並行世界が存在するマルチバースで、他の世界の自分を次々と殺して至高の存在になろうとする男が、最後の標的である主人公を倒すためにこの世界にやって来る。87分。
感想
ある並行世界にいる自分が死ぬと、その分だけ他の並行世界で生きる自分がパワーアップするマルチバースが舞台だ。主人公は、他の世界の自分をすべて殺そうとする自分に命を狙われる。
つまりジェット・リー演じる主人公が、他の並行世界にいたジェット・リー演じる敵と戦う構図になる。ジェット・リーのような本物、本当に強い役者にとってネックになるのは、相応しい敵役が見つからない事だ。それを解決する上で面白いアイデアだったと言えるだろう。
クライマックスでは、激しいジェット・リー対ジェット・リーの対決が用意されている。なかなか迫力はあったのだが、気を抜くとどっちがどっちなのかが分からなくなるのと、どうやって撮影しているのだろうとそちらにばかり関心が行ってしまうのとで、あまり気分が乗らず盛り上がらなかった。それに映像上はジェット・リー同士の戦いだけど実際は片方が代役なんだろうな、と思うと冷めてしまう部分もあった。
この物語の中で、敵を追う時空警察的な役柄をジェイソン・ステイサムが演じている。だがまだ「トランス・ポーター」シリーズでブレイクする前で、スキンヘッドでもなく貫禄もない。今そんな彼の姿を見るのはなかなか新鮮だ。この6年後の映画「ローグ・アサシン」で、彼はジェット・リーと敵味方で戦うことになるが、今回はまだそれには力不足感があった。役者の「格」はいろんな要素で変化していくのだなと感慨深い。
並行する世界がいくつもあるマルチバースという設定は、ちょっと考えただけでも色々と面白いことが出来そうだ。だが、この映画はほとんどそれを活かそうとしていない。ラストと時空警察の上司のくだりでそれが多少見られたくらいなので、なんだかあっさりしていて勿体なく感じてしまった。
ただ、サクッと見終わることのできる上映時間の短さには好感が持てる。色々アイデアを詰め込んでカオスになってしまうよりは、こっちの方が潔いかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ジェームズ・ウォン
脚本/製作 グレン・モーガン
製作総指揮 トッド・ガーナー/ラタ・ライアン/トム・シェラック/グレッグ・シルヴァーマン/ハッピー・ウォルターズ
出演 ジェット・リー/カーラ・グギノ/デルロイ・リンドー/ジェームズ・モリソン
音楽 トレヴァー・ラビン