★★★☆☆
あらすじ
中年のバンドマンは元メンバーに唆され、かつて一世を風靡したパンクバンドの再結成に乗りだす。
永瀬正敏主演、渋川清彦、北村有起哉ら出演。パンクバンド「アナーキー(亜無亜危異)」のギタリスト、藤沼伸一が監督。99分。
感想
一世を風靡したパンクバンドの再結成ライブを目指す中年のバンドマンが主人公だ。メンバーたちの現在と、過去の回想が描かれていく。見終わった後に知ったが、監督が在籍するバンド「アナーキー(亜無亜危異)」をモチーフにしているようだ。
再結成したメンバーの中では、もう一人のギタリストのキャラが印象的だ。目が死んでいて、虚無的な雰囲気を醸し出している。歯がないのも面白いが、へなちょこな殴りかかり方や力のない喋り方など、いかにもそんな人といった感じで、北村有起哉が巧みに演じている。
他のメンバーたちが、今は社会でそれなりの生計を立てている中で、彼は女に頼って酒を飲み、パチンコをしながらフラフラと暮らしている。世捨て人みたいだが、パンクには「それこそがパンク!」と、そちら方面に誘ってくるところがあるから厄介だ。
彼もどこかでこのままではいけないと思っていたのかもしれない。だがそんなパンクの誘惑に乗ってしまったのだろう。時おり彼の前には、それを具現化したようなパンクの化身が現れ、何かを訴えかけてくる。そしてついに男はパンクの負の部分に飲み込まれてしまった。その化身を演じるのが町田康なのは良かった。
同時に描かれる過去の回想も、この男を中心に描かれる。バンド活動を続けていく中で、主人公らとの間に溝が生まれていくのは切なかった。バンド解散や脱退の理由でよく挙げられる「方向性の違い」というやつは、きっとこういうことなのだろう。
もう全然若くない男たちが、再びパンクをやろうとする姿はなんとも味わい深い。もはや血気盛んでないだけに、相手を責めることはなく、包容力を持って互いに接している。パンクやロックは衝動的で刹那的なものだ。だから解散したり死んだりして、呆気なく終わってしまうものが多い。だが実は、欺瞞や苦悩、すべてを飲み込みながら、それでもひたすらやり続けることこそが本物のロックなのかもしれない。
ちゃんとしたライブシーンがなかったのが物足りないが、エンドロールのアナーキーのライブ映像がそれにあたるのだろう。パンクバンド「アナーキー」に思い入れのある人ならより楽しめそうな映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/音楽/出演 藤沼伸一
脚本 港岳彦/朝倉陽子
出演 永瀬正敏/北村有起哉/渋川清彦/有森也実/増子直純/松林慎司/篠田諒/山岸健太/長谷川ティティ/成海花/Skye/Johnny/Sena/Paul/山村美智/林家たこ蔵/うじきつよし/Mioko/RICO/PANTA/稲田錠/豪起/まちゃまちゃ/井上あつし/仲野茂/藤沼伸一/寺岡信芳/ユウミ
音楽 山下尚輝



