★★★★☆
あらすじ
カタカナしか書けない男が兵役で入隊し、仲間たちと親交を結んでいく。
シリーズ第1作。99分。
感想
軍隊生活に心の平穏を得た男の物語だ。タイトルから主人公は狂信的な軍国主義者なのかと思っていたが、そうではなくて、軍隊に家族的なものを見出して心を慰められている男だった。
早くに両親を亡くし、まともに食事も出来ないような環境でたった一人で生きてきた主人公にとって、ちゃんとご飯が食べられ、戦友と呼び合うような仲間と一緒に暮らせるなんて、天国みたいに幸福な気分だったのだろう。軍隊が素晴らしいのではなく、それまでの彼の境遇が気の毒なだけだった。
本来なら家庭や学校など、属してきたコミュニティで感じるはずの安心感を、主人公はようやく軍隊で得ることが出来た。最近は、子ども食堂で自衛隊の勧誘を積極的にやっているようなので、軍隊にしか居場所のない彼のような人間が今後、再びたくさん現れるのかもしれない。
子ども食堂で自衛隊が募集広報 防衛事務次官通達に抵触か(週刊金曜日) - Yahoo!ニュース
主人公らは最初の徴兵から除隊した後も二度召集され、戦地に赴いている。この時代の人たちは何度も戦争に行かされているのだなと同情してしまった。主人公と戦友の関係はその後もずっと続くが、再び徴兵されて喜び、除隊の噂が広まるとなんとか軍に残れないかと画策する主人公の姿には、複雑な気持ちにさせられた。
戦争の悲惨な部分はほぼ描かれず、軍隊生活のブライトサイドだけを描いたような物語となっている。公開当時はまだ戦争経験のある人たちがほとんどだったので、郷愁のようなものを感じながら皆この映画を見たのだろう。戦争の悲惨さは敢えて描かなくても、それぞれの思い出の中にある。ノスタルジーの邪魔するようなことをわざわざ描く必要はなかったのだろう。
本来なら出会うことのなかっただろう主人公と友人の間にずっと続く友情には胸が熱くなり、その悲しい結末には寂しさがあった。人の良い主人公にはもっと違う素晴らしい人生があったかもしれないのに、軍隊にしか居場所がないと思わせてしまうような社会は嫌だなと思ってしまう映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 野村芳太郎
出演
長門裕之/中村メイコ/左幸子/高千穂ひづる/藤山寛美/桂小金治/加藤嘉/西村晃/小田切みき/穂積隆信/森川信/高橋とよ/清川虹子/山下清/浜口庫之助
音楽 芥川也寸志
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