★★★★☆
あらすじ
日本降伏後にマッカーサーと共にやって来た将校は、天皇の戦争責任について調査するよう命じられる。
感想
天皇の戦争関与を調査する合間に、主人公とかつての日本人の恋人との思い出が回想されながら物語は進む。個人的には恋模様の話はどうでもいいから、もっとがっつり調査の様子を描いてほしかったというのが正直な所だ。だが、アメリカ人的には不可解な存在の天皇に興味はあるが、日本の終戦処理にはそこまで関心は無いといったところだろうか。
結局、天皇の戦争責任は問わないことになるわけだが、その根拠はやはり曖昧だ。天皇に責任を取らせて日本国民の反発を招き、治安を不安定にするよりは利用したほうがいいという打算的なものを感じた。ただ、マッカーサーと初対面したときの昭和天皇の発言はそれでも感動的で目頭が熱くなった。
しかし日本はいつになったらまともに責任を取れる国になるのだろう。もともと責任を曖昧にするし、すぐにカッコつけて勝手にすべての責任を引き受けて自決したりするし、そうでなければ逃げ回る。そもそも自分に与えられた責任を認識していないのかもしれない。どれだけ命令体系を遡っても、やれと言われたからやっているだけ、と皆が言いそうだ。与えられた職務を理解し、何に対して責任をもつのか明確に認識できていないのかもしれない。
この映画は日本人が持ち込んだ企画のようだが、それでもちゃんとアメリカが原爆や空襲で民間人を大量に殺害したこと、日本と同様の侵略を欧米も行っていることなど、耳に痛いはずの事もちゃんと描いていて、彼らの懐の深さを感じさせる。議論を巻き起こし、興行的には失敗したようだが。
日本で同じようなことをする気概のある人はなかなかいなさそうだし、いたとしてもメチャクチャに叩かれてしまうような気がする。日本では誰かの指摘を真摯に受け止め、誤りを正していくというような自浄作用はなく、すべてが有耶無耶になっていく。特に正義や公正さということに関してはそれが顕著かもしれない。
スタッフ/キャスト
監督 ピーター・ウェーバー
原案/製作 芥川保志
原作 終戦のエンペラー 陛下をお救いなさいまし (集英社文庫)
製作 奈良橋陽子/ゲイリー・フォスター/野村祐人/ラス・クラスノフ/芥川保志
出演 マシュー・フォックス/トミー・リー・ジョーンズ/片岡孝太郎/初音映莉子/中村雅俊/桃井かおり/伊武雅刀/夏八木勲/火野正平