★★★★☆
あらすじ
大学で物理学を学んでいたスティーヴン・ホーキングは一人の女性と恋に落ちるも、余命2年の難病と診断されてしまう。
事実を基にした映画。アカデミー賞主演男優賞。
感想
実話をもとにホーキング博士と妻の半生が描かれる。ホーキング博士についてはその存在を知っているくらいだったので、伝記的な意味でまず興味深かった。大学生の時に難病が判明したことも知らなかったが、人生これからという時にそんなことが起きたら絶望してしまうのは当たり前だろう。
その恋人は、彼の人生が残り少なく、しかもその間には様々な困難が待ち受けていることを承知の上で、結婚することを決意する。恋人が難病だからと簡単に別れることなど出来ないとはいえ、結婚後はさっさと子供まで作ってしまう彼女は肝が据わっているなと感心した。
だが、そのまま二人はいつまでも仲睦まじく暮らしました、とはならないのが現実の残酷さだ。博士の病状が進行し、彼女一人では支えきれなくなり、第三者に介護を依頼するようになる。家族だからと献身的にサポートしていたのに、家族の中に第三者が介入するようになると自分もその介護者の一人でしかないような気持ちになってしまうのかもしれない。
彼女が別の男性に惹かれてしまうのを見て、彼女も聖女ではなく普通の一人の女性だったのだなと少し安心するところもあった。それに裏でコソコソと会おうとしていたわけでもないので、彼女を責める気にもなれない。これまでの彼女を見ていたら、それでもほぼ聖女だと言ってもいいような気さえする。博士は彼女がいなければ全く違う人生を歩んでいただろう。子どもを持つこともなく、生きる意欲もわかず、学術的な成功もなかったかもしれない。
博士が倒れて病院に運び込まれ、彼女が医師に処置をどうするか判断を求められるシーンはとても印象に残った。医師は、今後はさらにサポートが大変になるから死なせることもできますよと仄めかしている。本人の意思ではなく、家族の都合で知らずに殺されてしまうこともあるということで恐ろしい。条件反射的にひどいと思ってしまうが、実際に当事者となったら、その選択肢を簡単に捨てることは出来ないのかもしれない。
愛が成就しそれが永遠に続くようなきれいなラブストーリーではなく、紆余曲折ある物語だ。だが博士が言ったように、二人がこの世で作り上げたものを見れば彼らが成し遂げたことのすごさを思い知る。恋愛というよりも人生の重みを感じさせられる映画だ。
彼らの私生活だけでなく、彼女のサポートのもと、博士がどのように学者としての功績をあげていったのかも見たかった。それはみんな知っているだろう、ということなのかもしれないが。
スタッフ/キャスト
監督 ジェームズ・マーシュ
脚本/製作 アンソニー・マッカーテン
出演 エディ・レッドメイン/フェリシティ・ジョーンズ/エミリー・ワトソン/チャーリー・コックス/サイモン・マクバーニー/デヴィッド・シューリス/ハリー・ロイド
音楽 ヨハン・ヨハンソン
撮影 ブノワ・ドゥローム
登場する作品
ホーキング、宇宙を語る―ビッグバンからブラックホールまで (ハヤカワ文庫NF)
登場する人物
スティーヴン・ホーキング/ジェーン・ワイルド・ホーキング/キップ・ソーン