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「ノクターナル・アニマルズ」 2016

ノクターナル・アニマルズ (字幕版)

★★★★☆

 

あらすじ

 アートギャラリーのオーナーで裕福な生活を送るも、冷え切った夫婦関係などで空虚さを抱える女は、作家の元夫から送られてきた小説の原稿を読み始める。

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感想

 何もかもを手に入れながら、満たされない気持ちを抱えて生きる女性が主人公だ。彼女の元に作家の卵だったころに別れた元夫から小説原稿が送られてきて、物語が始まる。

 

 現実世界、小説の中の物語世界、そして元夫との過去を描く回想シーンと、3つのストーリーが同時に描かれていく。

 

 

 メインとなるのは小説の中の物語世界だ。気分が悪くなるような事件が起こり、嫌な気持ちになってしまうのだが、それを読んでいる主人公と同じように、なぜか惹きこまれてしまう。

 

 単純にその小説単体で面白いのだが、読んでいる主人公のリアクションや元夫との過去の出来事と絡めて考えると、さらに想像が膨らんで面白くなる仕掛けとなっている。いくつもの意味が込められているような、どうとでも解釈できるような余地がたくさん残されているのがいい。

 

 小説の中のメインの人物、ジェイク・ジレンホール演じる男は、主人公が投影されているのだろう。大事な配偶者や子供を守る事よりも自分の身を守ることを優先し、そのことを悔いた時にはもう手遅れで為す術はなくなってしまっていた。だが犯人たちにも主人公の姿が重なっているようにも見えるし、また男も書き手である元夫自身に思えるような時もある。

 

 きっとこうやって書き手の様々な思いが登場人物たちに投影されて、小説は出来上がっていくのだろう。この他にどんな解釈があるだろうかと、見終わった後に様々な可能性を探る考察が頭の中をグルグルとめぐる。

 

 小説に心動かされた主人公が、元夫と待ち合わせするシーンでラストを迎える。これは復讐の物語だった。インパクトが凄かった冒頭のシーンも、夢よりも金を選び、肥大化していく欲望の中で生きる主人公のメタファーだったことが分かる。

 

 最初は単純にそう思ったのだが、もしかしたら私的でつまらない話しか書けなかった元夫が、それを物語に昇華してあなたの心を揺さぶり、ここまで連れて来られるくらいの力がつきましたよ、おかげ様ですと、ちょっとひねった感謝の意を表しているのかもしれないなと思うようにもなった。彼を待っている間にそう気づいたのなら、主人公も悪い気はしないはずだ。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/製作 トム・フォード

 

原作 ノクターナル・アニマルズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)


出演 エイミー・アダムス/ジェイク・ジレンホール/マイケル・シャノン/アーロン・テイラー=ジョンソン/アイラ・フィッシャー/アーミー・ハマー/ローラ・リニー/アンドレア・ライズボロー/マイケル・シーン/ジェナ・マローン

 

ノクターナル・アニマルズ - Wikipedia

 

 

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