★★★☆☆
内容
哲学者・教育者である著者による本の読み方の指南。1940年に出版された本の1972年改訂版。
感想
何について書かれた本か知り、そして伝えたいことを理解した上で、著者と対話をするという本の読み方が、順を追って事細かに説明されていく。本書は、この手の本としては古典で、きっとその後の同様の本がこの本を踏まえた上で書かれているだろうからか、内容的には新鮮に感じる部分はあまりなかった。
同様の本を読んだり、それなりに読書をしている人にとっては何となく身に付いている読書法と言えるかもしれない。ただ、改めて体系的に読書の方法をチェックしたい人にとっては具体的で分かりやすい良い本と言える。
基本的には良書を見つけて、それをじっくりと読むという事が推奨されているが、自身に関して言えば、近年そんな事をしたことは全くないなと少し反省してしまった。今は出来るだけ多くの本を読みたいという気持ちの方が強い。将来的には、それまで読んだ本の中から、心に残っているものを読み返してみたいと思っているが、実際やるかどうかは不明だ。どんなに頑張って本を読んだところで、全部の本を読むことは出来ないと、その時に観念できているかどうかにかかっているだろう。
著者との対話から得る唯一の利益は、相手から何かを学ぶことにあり、読書の成功は、知識を得ることにある。読者がこのことに思いいたれば、いたずらに論争するだけでは、何の益もないことがわかるだろう。
p154
著者と対話する方法を説明する章を読んでいたら、SNSなどでよく見られるやりとりのことを色々と考えてしまった。相手の言う事を完全に理解するまで反論するな、喧嘩腰で反論するな、という読書に対する姿勢と、SNSの世界は全く正反対だ。相手の意見を理解しようとしないで、言葉尻に反応し、挑発を繰り返している。
勿論読書とSNSは別ものだし、SNSのそれを娯楽や憂さ晴らしで使っている人もいて、別にそれはそれでいいのだが、こういう互いにメリットのある関係を築く方法を学んでおくのは重要だなと感じた。誰だって話を遮られたり、喧嘩腰で反論されたりしたら、有意義な会話をしようとは思わなくなる。
著者
M・J・アドラー/C・V・ドーレン