★★★☆☆
内容
58冊の本と数百本の論文を執筆した社会学者、ニクラス・ルーマンのメモ術「ツェッテルカステン」を紹介する。
文庫化の際に「メモをとれば財産になる」に改題。
感想
驚異的なアウトプットを生み出せるメモ術「ツェッテルカステン」が紹介される。文献を読んでメモを取り、それから浮かんだアイデアや疑問をさらにメモしていく。それらのメモが相互にリンクしていくことで考えが深まり、思いがけない発想が生まれたりもする。
メモの効用が色々と解説されているが、まずはメモを取る行為自体の重要性を理解する必要があるだろう。いつも考えていたことをいざ文章にしてみると、思っていたよりも中身が薄く、心もとなさを感じてしまうことがある。これはいつも考えているからといって考察が深まっているわけではなく、ただ思考がグルグルと堂々巡りをしていたにすぎないことを示している。
こんな事態に陥らないためにメモを取ることは重要だ。一度紙に書いてしまえば、次はそこを起点に考えることになり、それをまた書き留めればさらにそこから思考は深まっていく。それに自分の思考を頭の外に細かく記憶しておくことで、記憶するための脳のリソースを減らすことができる。そして、その分を純粋に考えるためだけに使えるようになる。
この本の中で「ブレインストーミングは古い」と言われてしまっているが、その時の気分や調子に左右されるブレストより、常日頃からアイデア出しをするツェッテルカステンの方が安定して高いパフォーマンスを発揮するのは当然だろう。大学生が一年目から実践すれば、4年目には自然と卒論のテーマが決まり、そのままサクッと書き上げてしまうことが出来そうだ。
手法自体はとても興味深く、やってみたいと思わせるものだったが、詳細な説明があまりなく、具体例も乏しいので、実際にどうやればいいのかが結局よく分からないのが残念なところだ。この本の通りに100人が実践したとしても、結果的には100人とも違うやり方をしていそうだ。ただ、厳密なルールに従うのが目的ではないので、使いやすいように各自でアレンジすればいいのだろう。
特にこのメモの手法は、大量の文章をアウトプットするためのものなので、クリエイティブなものを作るなど、別の用途に使う場合には、それ用にアレンジする必要はありそうだ。
個人的には、メモの清書をするのが面倒くさそうで、ボトルネックになるような気がした。梅棹忠夫の「知的生産の技術」で紹介されている京大式カードとよく似ているので、これにツェッテルカステンのエッセンスを取り入れるといい感じになりそうだ。
問題が原文にあるのか翻訳にあるのか分からないが、文章が不自然でスッと頭に入って来ないのは辛かった。何度読んでも何を言っているのかさっぱり意味が通じない文章も多々あった。一向に具体的なやり方が分からないのと相まって、ストレスを感じる読書になった。
著者
ズンク・アーレンス
翻訳 二木夢子
登場する作品
「啓蒙とは何か」 「 永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫)」所収
いつも「時間がない」あなたに 欠乏の行動経済学 (早川書房)
シェイクスピア全集 ロミオとジュリエット (白水Uブックス)
失われた時を求めて 1~第一篇「スワン家のほうへI」~ (光文社古典新訳文庫)
アイデア開発法―ブレインストーミングの原理と応用 (1961年)


