★★★☆☆
内容
日本やイギリスの書評文化に関する話や、著者による実際の書評を収めた本。
感想
書評をテーマにした本だ。著者は、書評は本の良し悪しを確認するためだけのものではなくて、それ自体が面白い読み物であり、読んでいなくても読んだような気にもなれる便利なものだと語る。まったくその通りだ。内容によっては、紹介されている本よりも、紹介している人が気になったりする。
その本の内容に関する知識を得られるのもいいところだ。紹介された本を手に取ることはなさそうだと思いながらも、エッセンスは知ることができる。今だとタイパのための要約まとめみたいなものもあるが、書評は評者の解説付きまとめ、みたいなものだろう。
彼によれば、東京裁判の描いた戦争は法的真実で、問題はあるけれど、日本はそれを受け入れることと引替へに平和で豊かな社会を享受した。それはいはば「司法取引の結果」だった。そして戦後五十年も経つたのに今の日本人がなぜ戦争の罪を引受けなければならないのかと言へば、資産を引継いだ以上、負債をも相続しなければならないからである。
p261 書評「柔らかい国家観 山崎正和「歴史の真実と政治の正義」」
これなどは、なるほどなと思ってしまった。日本の文化や伝統を誇るくせに、過去の過ちは関係ないというのは確かにおかしい。それなら日本の文化や伝統も関係ないと言わないとつじつまが合わないだろう。紹介された本は読んでないが、確かに学びがある。
収められた書評で紹介される本は、読んでみようとチェックしたものから、そうでないものまで様々だ。著者の知識や関心の幅広さに感心してしまうが、それにも様々なジャンルを紹介する書評が貢献しているのかもしれない。
読んでいるうちにどんどんと、本を読むモチベーションが上がる本だ。ジョイスの「ユリシーズ」は、気になりながらもなかなか手が出せずにいるが、本書で何度も言及されているのを読んでいたら、再び読みたい欲が高まってきた。
著者
丸谷才一

