★★★☆☆
内容
雑誌等に発表された書評と、読書にまつわるエッセイなどを収録。
感想
著者が本を読んで思ったことや感じたことを必死に言語化しようとしていることが伝わってくる書評が並んでいる。すごい真摯で生真面目な態度だが、その分書評としての面白みには欠けるかもしれない。
しかし、きっとこの生真面目さで書くから、著者の小説にはヤバさが漂うのだろうなと思わせるものがあった。人がふと魔が差したように思うことや、感じてはいるが意識まではしないでいることを、きっとこんな風に律儀に言語化していっているのだろう。だからヤバさを感じつつも、皆の心の琴線に触れてくる。
紹介されている本はほとんどが読んだことがなかったものだが、そのうちのいくつかは読んでみようかなと思うものがあった。紹介されている本は著者の好きな本のようだが、なかなか興味深いラインナップだ。イメージでしかないが、山田詠美を好きだとかは意外だった。
著者が幼い頃に、女子たちがかたまっているのを見るのが大好きで、時にはわざといざこざを煽るようなことをしていた、と告白するエピソードは強く印象に残った。大人になった今はそれを反省しているようで安心したが、そんなエピソードを語ってしまうところに片鱗を感じてしまう。言わないほうが良いことを言ってしまう、ある意味では正直な人なのだろう。
著者
村田沙耶香