★★★☆☆
内容
ゲームやアニメ、日本語ラップなど、身近なものを言語学的に考察する言語学者による科学的エッセイ。
感想
ポケモンやメイド喫茶などを題材に、言語学を紹介していくエッセイだ。一般読者の興味の入り口となるようにアニメやゲームを取り上げているのだが、残念ながら個人的にそれらを詳しく知らないので、その点では逆に少し辛かった。だがそれらに親しんで育ってきた今の学生だったら、興味津々になりそうだ。
言語学的な内容自体はどれも興味深い。メイド喫茶では名前の音だけでその店員がどんなキャラかだいたい分かるとか、ポケモンは進化すると名前の文字数が増えたり濁音が入ったりする等の法則があるとか、様々な事例が紹介される。赤ちゃんだったり、アカウント名だったり、何かに名前を付けたりする時の参考になりそうだ。
その他では、「にせだぬきじる」と「にせたぬきじる」の違いの話が面白かった。説明されるとへーと思うが、そうでなくても大体の日本語話者なら感覚的に違いが分かるのではないかという気がするから不思議だ。こんな風に濁音を付けたり付けなかったりと、自然に使い分けながら言葉を駆使しているなんて、冷静に考えるとすごいことだ。しかも誰かに教わったわけでもない。
これはネイティブでない人には驚きだろう。しかもなぜなのかと説明を求められても、まともに答えられなかったりする。こういう無意識に使っている複雑な用法はどんな言語にもきっとあって、それがネイティブとそうでない人を分ける壁になったりするのだろう。流暢に喋っていても、細かい言葉遣いに違和感があって、ネイティブでないと分かったりする。
発声する時の唇や舌の動きを説明する箇所は、言葉だけではイメージしづらくて苦労した。また家族の話や研究の裏話よりも、もっと研究の内容そのものを詳しく教えて欲しいと思うところもあったが、これはエッセイなので仕方がない。どのエッセイも、そこからいろいろな興味やアイデアが湧いてくる広がりのある内容で、言語学への良い入り口となりそうな本だ。
著者
川原繁人
登場する作品
サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念版 DVD(2枚組)
プリキュアオールスターズ まるごと大図鑑 2021 (おともだちムック)
