★★★☆☆
あらすじ
見世物小屋で働いていた男は読心術を学んで独立し、やがて金持ち相手に霊媒者まがいのことをするようになる。
同名小説の2度目の映画化作品。原題は「Nightmare Alley」。150分。
感想
家を焼き払って彷徨っていたところを拾われ、見世物小屋で働き始めた男が主人公だ。序盤は見世物小屋のいかがわしさや妖しさが満載で惹きつけられる。獣人などはビジネスでやっていて、裏では皆と仲良くしているのだろうと思ったら、本当に獣扱いしていて引いてしまった。当時の人権感覚にビビる。
読心術を習得して独立し、金持ち相手のショーで成功した主人公は、知り合った精神科医の女と組んで、霊媒師まがいのことを行うようになる。心が弱っている相手を騙して大金を巻き上げるわけなのであくどいといえばあくどいのだが、教会で神父がやっている事と変わらないと主張する主人公の言い分には一理ある。精神科医ともやっていることはそんなに変わらないだろう。
だがこれが怖いのはペテンだとバレた時だ。誰だって騙されたらいい気分はしない。当然怒る。ましてや相手が権力を持った金持ちともなれば、どんな報復をしてくるか分かったものではない。主人公が彼らの猜疑心を技術と度胸ではねのけ、信用を勝ち取って行く様子はスリリングだった。
しかし金持ち側も、どんどんと要求がエスカレートしていく。金さえあればなんだってできると思い込んでいる彼らの傲慢さには呆れてしまうが、それに応えようとした結果、ついに主人公は嘘がバレてしまう。無茶な手口にそりゃそうだろうと思ってしまったが、金持ちがそんな事が出来ると信じ込んでしまっていたことが怖い。主人公に読心術を教えた老人の警告がここで効いてくる。
大失敗をした主人公は転落していく。とどめを刺したのは相棒の精神科医の女の裏切りだ。考えてみれば最初から彼女は主人公に患者としての関心を示していた。最初の出会いで一杯食わされたことに対する復讐心もあったのだろう。
主人公は、彼女も自分同様に悪い人間だと見ていたが、実際には主人公以上に悪い女だった。金目当ての悪人なんて大したことがない。悪に目的があるようではまだまだだということなのだろう。
ストーリーの中で一番意外性があるのはこのパートだ。だが唐突な印象があり、驚くよりも呆気に取られてしまった感の方が強い。それなりに伏線はあったが、もうちょっと事前に彼女の怪しさを強調して、ついに本性を現したかと思えるような展開にして欲しかった。
エンディングでは見事にオチが付く。かなりばっちりと決まっていたが、丁寧な前振りのせいでかなり早い段階で予想できてしまっった。
精神科医の女との関係以外は基本的にじっくりと描かれており、そのせいか全体としては冗長な印象だ。上映時間を2時間半ではなく、メリハリをつけて2時間くらいにおさめてくれたらもっといい感じになったような気がする。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/製作 ギレルモ・デル・トロ
製作 J・マイルズ・デイル
製作/出演 ブラッドリー・クーパー
出演 ケイト・ブランシェット/トニ・コレット/ウィレム・デフォー/リチャード・ジェンキンス/ルーニー・マーラ/ロン・パールマン/メアリー・スティーンバージェン/デヴィッド・ストラザーン/ホルト・マッキャラニー/ポール・アンダーソン/ジム・ビーヴァー/クリフトン・コリンズ・Jr/ティム・ブレイク・ネルソン/デヴィッド・ヒューレット/スティーブン・マクハティ/ロミナ・パワー*
*カメオ出演
関連する作品
同じ原作の映画化作品