★★★☆☆
あらすじ
巨大なクレーターで有名な砂漠の町にやって来た人々は、とある出来事をきっかけに町に閉じ込められてしまう。105分。
感想
砂漠の町が舞台の物語だ。まずはウェス・アンダーソン監督らしい淡い色合いにデザインされた映像が可愛らしく、心地よい。この映像を眺めているだけでも満足できる。
またこれは、演劇の制作過程を紹介するテレビドキュメンタリー番組内の架空の劇中劇という設定となっている。舞台裏の様子はモノクロで舞台のように、逆に劇中劇はカラーで現実世界のように描いているのも面白い。まるで自由に空想する事の素晴らしさを示しているかのようだ。
主人公はこの町で開催されるジュニア宇宙科学大会に参加する息子を他の娘たちと共に連れてきた戦争写真家だ。最近妻を失い、その対処に苦慮している。この一家に彼らと同様に大会に参加するためにやって来た親子や引率の教師と生徒、たまたま居合わせたバンド、そして地元の人々が交流する様子がコミカルに描かれる。
なかでも全米から集まった天才少年少女らが結託し、ある出来事により軍がが敷いた隔離措置を軽々と突破してしまうのが面白かった。極秘にするために町を住人ごと閉鎖したのに、逆に世界中に知れ渡って一大観光地になってしまった。隠そうとすればするほど広まってしまうのは、最近ではよくある話だ。
随所にトボけた笑いが散りばめられ、それなりに楽しめる。だが、登場人物が多すぎて、話が分かりづらい。有名キャストが多いのも贅沢ではあるが、もったいない使い方になっている。それぞれの話が中途半端にごちゃごちゃし、取っ散らかってしまった印象だ。
車が壊れたり代役の話があったり、共演予定だったが今は別の舞台に出ている女優と再会したりと、さまざまな場面をメタファーとしながら、主人公が妻を失った喪失感から立ち直っていく過程が描き出されていく。砂漠の町での思わぬ滞在は、「目覚めたければ眠れ」の言葉の通り、彼にとって心を整理し立ち直るための貴重な時間となった。
スタッフ/キャスト
監督/脚本/原案/製作 ウェス・アンダーソン
原案/製作総指揮 ロマン・コッポラ
出演 ジェイソン・シュワルツマン/スカーレット・ヨハンソン/トム・ハンクス/ジェフリー・ライト/ティルダ・スウィントン/ブライアン・クランストン/エドワード・ノートン/エイドリアン・ブロディ/リーヴ・シュレイバー/ホープ・デイヴィス/ルパート・フレンド/マヤ・ホーク/スティーヴ・カレル/マット・ディロン/ホン・チャウ/ウィレム・デフォー/マーゴット・ロビー/トニー・レヴォロリ/ジェフ・ゴールドブラム/フィッシャー・スティーヴンス/ソフィア・リリス/リタ・ウィルソン/ボブ・バラバン/ジャーヴィス・コッカー
撮影 ロバート・D・イェーマン