★★☆☆☆
あらすじ
いわくつきの部屋に泊まり、恐怖度などを評価するガイド本を出版している作家は、ニューヨークのとあるホテルで恐怖体験をする。
感想
幽霊が出るなど心霊現象が起きると噂されるホテルの部屋に泊まり、各ホテルの恐怖度などを評価したガイド本を出している作家の男が主人公だ。調査にやってきた主人公に、宿屋側がどんな怪奇現象が起きるのか、必死におどろおどろしく語ってアピールするのがすごい。それを面白がってやってくる客を増やそうという算段なのだが、こういうビジネスは日本でも同じように通用するのだろうか。日本だと必死に隠そうとするし、喜んでやってくる客も数人のユーチューバーぐらいなような気がする。
実は主人公は、そんな心霊現象など信じていない。だから適当に、あることないことを面白おかしく書くだけなのかと思ったら、色々な機器を持ち込んで数値を計測したり、ボイスレコーダーでこまめにメモを取ったりと意外と真面目だった。さすがにそこはプロの仕事だということか。だが部屋をあれこれと調べていたら、宿屋なのに全然眠れなさそうで大変かもしれない。
やがて主人公は導かれるようにニューヨークの怪しげなホテルにやってくる。必死に引き留める支配人を、恐怖の演出が上手いと鼻で笑って無理やり宿泊するのだが、案の定、怪奇現象が次々と起きる。突然の大きな音、急に出現する何か、逆にあるはずのものがなくなるなどの定番シーンの連続に、主人公と同様に驚かされビビらされ、ドキドキさせられる。ホラー映画として純粋に楽しめた。
そんな恐怖に慄いていた主人公が途中で、いやいやそんなわけない、これは幻想に違いない、と自分に言い聞かせ始めたのは流石だった。そんな状況でも冷静になれるなんて、場数を踏んでいるだけのことはある。だがそれと同時に、見ているこちらまで急に冷静になってしまったような気がする。普通に楽しんでいたのに、そうだよな、これはどうせ幻想だよな、と一気に現実に引き戻されてしまった。それからは何が起こっても冷めた目で見てしまい、長々と続く怪奇現象に飽きた。
そしてやっぱり幻想で、ようやく終わったなと一息ついたところでまた戻ってしまうのでがっくり来る。ただ全体を通してみると、主人公の心の闇を明らかにしていく物語で、なぜ彼が怪奇現象を信じていないかなどの伏線もちゃんと効いていて、そんなに悪くないストーリーではある。この部屋は上手く使えば、逆に良いセラピーになりそうだ。
主人公のトラウマと部屋の怪奇現象のつながりをもうちょっとうまく描いてくれれば良かったのだが、それをしないで「これは幻想だ」などと言われてしまうと、確かに起こる現象はすべて主人公にしか分からない、個人的な心の闇を反映しているのだから、彼の幻想なのだろうなと思ってしまう。そしてそう思わされてしまったらもう無理だった。映画のマジックが消えてしまった。
スタッフ/キャスト
監督 ミカエル・ハフストローム
原作 「一四〇八号室」 「幸運の25セント硬貨 (新潮文庫)」所収
出演 ジョン・キューザック
メアリー・マコーマック/トニー・シャルーブ
音楽 ガブリエル・ヤレド
撮影 ブノワ・ドゥローム