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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「さよならくちびる」 2019

さよならくちびる

★★★★☆

 

あらすじ

 解散を決めて最後のツアーに出た女性デュオとローディ兼マネージャーの男。

 

感想

 解散を決めたインディーズで活躍する女性デュオとローディー兼マネージャーの男の三人。彼らのツアーの様子に過去の回想を交えつつ物語は進む。回想部分では、女たち二人の出会いから、男が加わりそして現在に至るまでのいくつかのエピソードが断片的に描かれる。だがそこには彼女らが解散を決めた決定的な理由のようなものは見えてこず、ただいくつかのすれ違いや衝突が描かれるだけだ。こういうものは大きな事件ひとつではなく、小さな事件が積もり積もることによって限界を迎えることの方が多いのかもしれない。案外、最後は静かなものだ。

 

 音楽が大きな要素を占める物語なので、劇中で使われる曲が駄目だったらすべて台無しになってしまうところだったが、幸いそんなに悪くなくて安心した。というか良かった。あとで調べたら秦基博とあいみょんが楽曲を提供していた。デュオ「ハルレオ」のメンバーを演じる小松菜奈と門脇麦の歌声も良くて、彼女らがインディーズで人気があるという設定にも普通に納得でき、説得力があった。

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 この映画は、三人が一台の車に乗り込んで全国を回るロードムービーでもある。だがランドマーク的なものが映し出されることもないので具体的な場所が分かりづらく、いまいちどこにいるのかはよく分からなかった。別に観光をするわけではなく、ライブハウスを回っているだけなので当然ではあるのだが。ただ各地の実際のライブハウスで撮影を行っているので、各地のライブハウスをめぐったりしたことがある人にはピンと来て、グッとくるロードムービーとなっているのかもしれない。

 

 ツアー中も三人の冷え切った関係はあまり変化することはない。だがツアーの終盤に差し掛かり、終わりが見えて来ると次第に何とも言えない物悲しさが募ってくる。映画を見るまでは彼女たちの事なんか知らなかったのに、ツアーの様子を追っているうちに、いつの間にかこちらまで彼女たちの解散を惜しむ気持ちになってきているから不思議だ。

 

 

 音楽賛歌であり、解散していった数多のバンドに対するレクイエムであるかのような映画だ。ただ最後がハッピーエンドになったことががっかりだった。確かにそれを期待する気持ちはあったが、もう彼女たちは後戻りが出来ない所まで来ていたはずだ。なんだかラストで壮大なコントを見ていたような気持ちになってしまった。そのまま、かけがえのない日々にもいつかは終わりがやって来てしまうのだと、後ろ髪を引かれるようなビターな後味の結末にして欲しかった。

 

 それからあまり本題とは関係ないかもしれないが、ツアーの帰路の高速道路で、追い越し車線をトロトロと走って左の走行車線から他の車にどんどん抜かれていくシーンがめちゃくちゃ気になってしまった。敢えてやっているのだろうから何かのメタファーなのかもしれないが、そういう迷惑運転は止めてくれという気持ちで一杯になり、それについて考える余裕は全くなくなってしまった。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本/原案 塩田明彦

 

出演 小松菜奈/門脇麦/成田凌/篠山輝信/松本まりか/新谷ゆづみ/日髙麻鈴/青柳尊哉/松浦祐也/篠原ゆき子/マキタスポーツ

 

音楽    きだしゅんすけ

 

さよならくちびる - Wikipedia

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