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「女ざかり」 1994

あの頃映画 「女ざかり」 [DVD]

★★★★☆

 

あらすじ

 論説委員として初めて書いた社説が政府を怒らせ、その圧力によって左遷させられそうになった女性社員は、様々なコネを使ってそれに対抗しようとする。

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感想

 与党を援助する宗教団体を怒らせてしまったことから政治的な圧力をかけられ、左遷させられそうになった新聞社の女性論説委員が主人公だ。原作を読んだ時も感じたが、改めて今の政治状況とダブってしまって複雑な気持ちになる。ずっとこんな調子で政治が行われているということなのだろう。その結果が失われた30年であり、それが今、40年となってしまうかどうかの瀬戸際にある。

 

 主人公や周辺人物が、左遷をやめさせるために各方面に奔走する様子が描かれていく。そんな中では、主人公の娘が、政治家に影響力を持つ書道家に助力を請う場面はグッときた。色ボケを装う老人にいいようにされてしまうだけなのだが、仲介者としてその場に立ち会っていた恋人も含めたなんとも言えない三人の時間が流れる。演じる藤谷美紀の事は今まで全く意識したことがなかったが、初めていい女優だなと思った。

 

 それから、岸部一徳演じる与党の幹事長は可笑しかった。いかにも日々たくさんの人と会い、頼んだり頼まれたりすることに慣れている政治家といった様子で、陳情しにきた主人公の恋人を簡単にあしらってしまう。圧をかけたりへりくだったりと短い時間で目まぐるしく態度を変えながら、だけど主導権は絶対に渡さない。それでいて相手を怒らせたままにはしておかない抜け目なさもあるのが老獪で、政治家らしい。

 

 

 全体的にどこか雑然とした雰囲気があり、時おりよく分からないようなシーンも挿入されたりするのだが、その何もかもがはっきりとわかるわけではない曖昧な感じがなぜか心地よかった。見る側が自由に想像をふくらませることができる余地となっていて、映画に懐の深さを感じる。

 

 各エピソードがプレゼントや貸し借りといった「贈与」に関するトピックで統一されているからこそ、この余白が生きてくるのだろう。今が人生のさかりと生きる人々の、ギブアンドテイクの法則に無意識に囚われた人間模様が浮かび上がって来て味わい深い。

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スタッフ/キャスト

監督/脚本/編集

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原作

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出演 吉永小百合/三國連太郎/風間杜夫/藤谷美紀/岸部一徳/高島忠夫/前田武彦/尾美としのり/片岡鶴太郎/高松英郎/堺左千夫/本田博太郎/峰岸徹/内藤陳/安田伸/入江若葉/岩松了/中島啓江/ベンガル/伊佐山ひろこ/林泰文/根岸季衣/月丘夢路/中村玉緒/水の江瀧子/宍戸錠/松坂慶子/山﨑努/本多猪四郎*/村田雄浩*/赤川次郎*/原ひさこ*/ピーコ*

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*写真出演

 

音楽 久石譲

 

女ざかり (1994年の映画) - Wikipedia

 

 

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