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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「才女気質」 1959

才女気質

★★★☆☆

 

あらすじ

 京都で表具商の夫を尻に敷き、一家を取り仕切っていた女だったが、成人した子供たちの自由な振る舞いに振り回されるようになる。

 

 タイトルの読みは「才女気質(さいじょかたぎ)」。

 

感想

 家のことを取り仕切って上手くやっていた女が、息子とその新妻、娘とその恋人といった若い世代とのギャップに戸惑う。こってりとした京都弁で繰り広げられる人情喜劇だ。今の感覚ではそれほど笑えるシーンはないのだが、味わい深さはある。

 

 主人公はなにも利己的に家族に指図をしているわけではなく、家の繁栄のために良かれと思ってやっている。それが本当に家族の幸せになるのであれば全く問題ないのだが、他の家族がそうは思えない時には単なる横暴で独善的な人に見えてしまう。

 

 

 しかし彼女自身は、時には心を鬼にしてまで正しいことをしていると思い込んでいるわけで、それなのに悪者にされたらいじけてしまうのも分からないではない。自分の行いは正義だと信じ切っている人の厄介なところだ。人は、自分は正しいのか?間違っていないのか?と常に疑っているくらいがちょうど良いのだろう。それでこそまともでいられる。

 

 クライマックスの皆が勢ぞろいした法事の席で、一家はバラバラになってしまう。そこで考えを改めた主人公が取った解決策は柔軟なもので、まさに才女だった。自分の考えに固執する堅物ではないのだなと感心させられた。

 

 ただその一方で、今だとそれは普通のことなので、なんだそんな事で苦労していたのかと、価値観の古さに時代を感じてしまった。

 

 今もその価値観のままだったら、同じようにつらい思いをする人は一杯いたはずだ。だから社会の進歩は大事だなと実感する。もしかしたらまだ田舎ではそんな価値観が残っているのかもしれないが、今では多くの人がそんな苦労を知ることなく幸せに暮らせている。

 

 とはいえ今だに世間の古い家族観に苦しんでいる人はまだまだいるはずだ。どんどんと価値観が更新され、進歩する社会であって欲しいものだ。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 中平康

 

脚本 新藤兼人

 

原作 「賢女気質」 田口竹男

 

出演 轟夕起子/大坂志郎/長門裕之/中原早苗/吉行和子/葉山良二/原ひさ子/殿山泰司/新井麗子/渡辺美佐子/吉川満子/相馬幸子/峯品子/小泉郁之助/井東柳晴/江上トミ/林茂朗

 

音楽 黛敏郎

 

才女気質

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