★★★★☆
あらすじ
侠客の男とその家の養女となった女、そして彼らの周囲の者たちを描く。
感想
鬼龍院花子の生涯、と言いながら、その実は「鬼龍院花子の養父の半生」とした方が正しいのかもしれない。侠客に囲まれて育ちながらも学校に通って教師となり、やがて労働活動家の男と結婚した主人公の人生はあまり詳細に描かれておらず、いつの間にか教師となり、いつの間にか男と一緒になっていた。確かに自立した一人の女の人生よりも、侠客の男たちの抗争やその妻や妾達の人間関係の方が面白いのは否めないが。
ほとんど主演と言っていい仲代達矢の、肝の据わった雰囲気や侠客という言葉に無邪気に反応する子供っぽさ、危機を察知する勘の鋭さ等、物語の中で見せる様々な表情には吸引力がある。彼の演技だけで侠客一家の栄枯盛衰すら表現できているような気がする。
そしてあまり見せ場のなかった夏目雅子だが、終盤の有名な「なめたらいかんぜよ!」のシーンだけで面目躍如のインパクトを与えている。侠客の世界とは距離を置いて自らの人生を歩んではいたが、義理とはいえあの父親の血を受け継いでいるということか。その後に父親と言葉を交わした時の、彼女の何とも言えない表情が良かった。
スタッフ/キャスト
監督 五社英雄
出演 夏目雅子/仲代達矢/仙道敦子/岩下志麻/佳那晃子/室田日出男/夏八木勲/佐藤金造/アゴ勇/益岡徹/山本圭/梅宮辰夫/成田三樹夫/夏木マリ/綿引洪(綿引勝彦)
音楽 菅野光亮
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