★★★☆☆
内容
太平洋戦争が始まった1941年12月8日。著名人たちが残したその日についての文章がまとめられている。
感想
読んでみた感想として一番に感じるのは、ほとんどの人たちが年齢関係なく開戦を肯定的に捉えていること。しかも、ようやく始まったか、とか涙がでるほど嬉しいとか、かなりポジティブ。無邪気に喜んでいる。
でもこれは意外でもなんでもないのかもしれない。きっと開戦に向けての世論は出来上がっていただろうし、当時戦争は特別なものでもなかった。何か大きな変化が起きることを待ち望むほど、当時は閉塞感が漂っていたのかもしれない。
そんな中で印象的だったのはジャーナリストの清沢洌。自分たちの努力が足りなかったせいで戦争になってしまった、という言葉は、「皆が自分の言うことを聞いていればこんな事にならなかった」と他人を責めがちな所を、自分の力不足として全ての責任を負おうとしている所に、彼の真摯な人柄が窺える。
もう一人は野口冨士男。アメリカと戦争という事はしばらくアメリカ映画を見れなくなるだろうと、映画館に行って「スミス、都へ行く」を観ている。この浮足立ってない冷静な感じというか、そのセンスに惚れ惚れしてしまった。
こうして開戦の日の文章ばかりを読んでいると、この人達は終戦の日にはどう思ったのだろうと気になってくる。そしてこの開戦の日を振り返ってどう感じたのか。
それからこの本の趣旨とは違うのだが、この本では開戦当日の著名人の年齢が若い順に文章が掲載されていて、一緒くたにしてしまいがちなこの時代の各著名人の世代の違いが把握できるのも面白いところ。この人とこの人はほぼ同世代なのか、とか、こんなに年齢差があるのか、とか意外な発見があったりした。
編者
方丈社編集部
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