★★★☆☆
内容
水木しげるの死去など、前作の後に起きた事などが語られる。
感想
序盤は水木しげるが亡くなるまでのことが綴られる。本人も100歳まで生きると豪語していたくらい元気で、個人的にはもうこの人は死なないんじゃないかくらいに思っていたので、亡くなるまでの日々を読んでいるとやはりこの人も人間だったんだよなと思わせられた。本当は120歳くらいになってもニッコニコで長生き自慢をしていて欲しかったが、現実はそううまくはいかない。延命措置をしないことを決め、水木しげるの最期となった時の話には目頭が熱くなった。
そして著者が、夫を亡くした素直な気持ちを率直に語っていて、しみじみとしてしまう。年老いた夫婦が伴侶を失った時は、悲嘆に暮れて泣き濡れるというよりは淡々としているようなイメージがあるが、やはり内心は悲しみや寂しさで溢れているというのは当然か。何十年と一緒にいた人が突然いなくなるわけだから。ただ若い頃とは違って、それを予期できているというか、覚悟がある程度できているという事なのだろう。
それから、著者たちの家族の仲の良さが良く伝わってくるのも微笑ましい。娘たちが両親のことを気にかけていることがよく分かるし、あまり本心を直接言い合わない両親の間の仲立ちとなって伝言係も務めている。両親も娘たちを信頼して頼っていることがよく分かる。これも貧しい時から何があっても家族を守り支えとなって来た水木しげるの力であるとともに、それに素直に付き従ってきた著者の力でもあるのだろう。最後の母娘による座談会でもそんな雰囲気が伝わってくる。
しかし元気だった夫婦も、夫が亡くなることによって支えていた妻の気力が衰え、これまでの生活が一気に変わってしまうというのは、どんな夫婦にも起こり得ることで、あまり考えた事のない老後の人生について色々と考えてしまった。これで独身だったり子供がいなかったりしたら、また色々と事情は変わって来るだろうし。
本の後半は著者の周辺雑記のようになっている。デイケアサービスの話だったり、これからのことについて語られていて、お年寄り本人がそういう事について自ら記したものを読むというのはなかなかない体験なので、色々と興味深かった。
著者
武良布枝
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