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「結婚相談」 1965

結婚相談

★★★☆☆

 

あらすじ

 30歳となるも独身のままで焦った女は、結婚相談所を訪れるが、思わぬ事態に巻き込まれていく。

 

 中平康監督、芦川いづみ主演。105分。

 

感想

 結婚を焦る30歳の女が主人公だ。結婚相談所に登録して見合いをするようになる。なんとなく結婚や見合いをテーマにしたほんわかとしたコメディなのかなと思っていたのだが、特に笑いはなく、思うように縁談が進まず落ち込んでいく主人公の姿が描かれていく。

 

 それが影響したのか、過ちを犯してしまい、ここから主人公の転落が始まる。結婚相談所に弱みを握られ、利用されるようになってしまう。だが正直なところ、そうなっていった過程はよく理解できなった。

 

 

 ただでさえ条件が悪いのに、その上、悪評まで流されたら困るだろう、ということなのだろうが、相手も落ち度があることは認めているわけなので、そこまで言いなりになる必要はないように思えた。強要されている内容を考えれば、多少の被害を被っても断るべきだった。

 

 だが主人公の中では守ってきたことを反故にしてしまった罪悪感があり、自棄になってしまったのだろう。ダイエットを断念した途端、ドカ食いするようなものだ。そう考えると、自分に厳しいとその反動が大きくなるので良くないのかもしれない。

 

 主人公は、30歳までに結婚しないと行き遅れとか、結婚前に関係を持つとふしだらとか、世間の考える女性観に囚われて焦り、卑屈になってしまった。それがなければ平然としていられたわけだから、自分を縛るような規範には出来る限り抗い、無くしておいた方がいい。

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 だいたいのことはやっても良いと思うけど、ただ自分はやらないだけ、くらいの気持ちでいた方がいい。そうすれば、もしやってしまっても、だから何?と開き直っていられる。自分は駄目な人間だと責めずにすむ。

 

 その後、主人公はどんどんと訳の分からない方向に進んでいく。なぜか皆がやめておけと忠告する男にわざわざのめり込んでいくし、謎の未亡人の気持ちの悪い依頼にも応じてしまう。最初に騙されて言いくるめられてしまったところも含めて、そういうところが結婚できない理由なのでは?と思ってしまった。変なところでスイッチが入る。

 

 ただ、よく分からない話ではありながら、次第にじわじわと怖くなってくるホラー映画のような趣はあった。特に謎の未亡人の家でのシーンは不気味だった。おそらく、その意味不明さに飲み込まれていく理不尽さや不条理が恐ろしく感じるのだろう。現代的というよりも中世の封建制度的な怖さかもしれない。皆、文明人みたいな顔をしているが、まだまだ古い価値観に囚われていることを示唆している。

 

 ずっと重たく暗い雰囲気に覆われた映画だ。それを挽回しようとしたのか、ラストシーンだけ急に小津映画のように牧歌的で朗らかな感じになったが、いや今さら無理だから、と苦笑いしてしまった。

 

 主演の芦川いづみの大胆な演技は見どころの一つかもしれない。

 

 

スタッフ/キャスト

監督 中平康

 

原作 絶版本円地文子「結婚相談」 佐野繁次郎 初版

 

出演 芦川いづみ/浦辺粂子/山本陽子/中尾彬/沢村貞子/梅野泰靖/草薙幸二郎/松下達夫/高原駿雄

 

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