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個人的な映画・本・音楽についての鑑賞記録・感想文です。

「ゲゲゲの女房」 2008

ゲゲゲの女房

★★★★☆

 

内容

 人気漫画家・水木しげると見合い婚した著者の自伝。

 

感想

 お見合いで後に人気漫画家となる水木しげると結婚した著者。今お見合いと聞くと少し身構えてしまうところがあるが、著者の話を聞いていると案外悪くないかもと思えてくる。結婚の価値をどう捉えるかによるが、助け合って生きるためのパートナーを得るものと考えるなら、こういう始まり方も悪くない。相手がどんな人か分からないドキドキもあって面白そうだが、ただやっぱり一生を賭けたギャンブルになるのが最大のネックか。リスクがでかい。

 

 それから二人の暮らしが始まるのだが、水木しげるの興味深いキャラクターが良く描かれている。よく寝るとか頑張らないとか、気楽に生きているイメージがあったが、実際の彼は日夜仕事に打ち込み、貧しいときから親兄弟の面倒をみて養っていたというのは意外だった。彼にはやるべきことが分かっていて、それ以外の雑事に余計な気を使いたくないのだろう。なんとなくプログラマーの三大美徳「怠惰・短気・傲慢」に相通じるものがあるような気がした。

 

「お前は土俵をおりるのか。胸をはって行くんだ。わかったな」

p128 単行本版

 

 雑誌の人気漫画家の妻特集に出るのをためらっている著者に、水木しげるがかけた言葉も印象的だった。ヘラヘラ、フラフラしているだけでなく、勝負するときにはちゃんと真っ向から勝負する気概を秘めている。考えてみれば、弱音を吐けるのは強い人間だけなのかもしれない。弱い人間は、どんなに苦しくてもそれを口には出せず、惰性のままそのまま頑張って心を病んでしまう。水木しげるが激戦の戦地から帰って来れたのも、運だけではなく彼のこの強さがあったからのような気がする。

 

 

 その他、夫の成功を夫自身の努力の結果だと素直に讃えていたり、超売れっ子となった夫にかまってもらえず寂しい思いをしたことが率直に綴らていたりと、著者の語り口に飾らない人柄が窺えて、なんだか温かな気持ちになってくる。個性の強い夫と上手くやれるのも、娘たちをはじめ親族たちとの関係が良好そうなのも、彼女の存在が大きいはずだ。多様化する社会で、皆の参考になるような生き方ではないのかもしれないが、こういう生き方もあるのだなと教えてくれる。

 

著者

武良布枝

 

ゲゲゲの女房

ゲゲゲの女房

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ゲゲゲの女房 - Wikipedia

 

 

登場する作品

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