★★★☆☆
あらすじ
情事中に首を絞めて愛人を殺してしまった作家の男は、裁判を受けることになる。125分。
感想
豊川悦司演じる作家と寺島しのぶ演じる子持ちの主婦の愛の物語だ。男が女を殺してしまった場面から始まり、続く裁判で二人の出会いから事件までが明らかにされていく。
ただ、裁判は特に争うこともなく進行するし、二人の恋愛も愛憎渦巻くわけではない純愛で、何もかもが順当だ。うまくいっているカップルの話も、被告が罪を認めている裁判も、野次馬的には大して面白いものではないだろう。ただ眺めるしかない。
本来なら互いの気持ちに不安を覚えたり、二人だけの世界に没入する幸福感や怖さ、家族や世間に対する後ろめたさなど、それなりに背負うものがある大人同士の恋愛ならではの感情の機微が表現されるべきなのだろうが、ただ形式的に進行するだけになってしまっている。障害も衝突もなく、目的地に向かって問題なく進んでいく。情感なんてない。
男の妻や娘、女の夫など彼ら以外の登場人物も、ただ登場するだけで特になんの効果も生んでいない。中でも検事役の無駄にセクシーで演技も浮いている長谷川京子は、何かとノイズを生んでいるだけだった。
それから、収監中の男の前に死んだ女が泳いで現れる場面があり、美しく幻想的なシーンにしたかったのだろうが、水中の寺島しのぶの顔が面白くなってしまっていて、台無し感がすごかった。特に何もない映画の中で唯一の、心躍る楽しい瞬間ではあったが。
たっぷりとある激しい濡れ場シーンだけが見どころと言えそうな映画だ。エンディングを迎えた時には、終わったな、という事実確認以外の感想がなにも浮かんでこなかった。だが、こういう大人の情愛物語が好きな人なら楽しめるのかもしれない。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 鶴橋康夫
出演 豊川悦司/寺島しのぶ/長谷川京子/仲村トオル/陣内孝則/浅田美代子/余貴美子/松重豊/本田博太郎/高島礼子/佐々木蔵之介/貫地谷しほり/富司純子/六平直政/三谷昇/木下ほうか/阿藤快/中村靖日/森本レオ/品川徹