★★★☆☆
あらすじ
憧れの先輩を追って東京の大学にやって来た少女。
感想
高校の憧れの先輩に会うために東京にやって来た少女が主人公だ。演じる洞口依子が、幼い面影を残しつつ、思春期の少女の不満も表しているような良い表情をしている。それを際立たせるような構図や撮り方もしていて、彼女の存在感が強く印象に残る。
それから大学教授役で伊丹十三も出演している。これまであまり彼を二枚目だと思ったことはなかったが、この映画での彼は男前だ。これで身長が180センチもあるのだから、それは海外の映画にも呼ばれるわと色々納得した。彼の役者としてのイメージは、「家族ゲーム」のみみっちい父親役くらいしかなかったので、認識が変わった。
奇妙なシーンやシュールなシーンをコラージュしたようなゴダール的というか、この時代によく見られたスタイルの映画となっている。もともと日活ロマンポルノのつもりで製作したらしく、そっち方面の描写も多くて混沌に拍車をかけている。物語というよりもそれぞれのシーンを楽しむ感じで、だが不思議と見ていられる。憧れの先輩が仲間と歌の練習をしていて喧嘩を始めるシーンは可笑しかった。
憧れの先輩や東京、そして大学に大いなる希望を抱いていた主人公が、その現実を知っていく。少女は最初失望するが、そんなに悪いところではないと思い直すようになる。
大学生はモラトリアムで暇を持て余し、欲望に溺れたり、馬鹿なことに心血を注いだり、無駄に思考を巡らせたりする。一見、無意味に思えるが、長い人生にこういう時期は必要で、その経験が後で活きてきたりする。たまにそこから抜け出せなくなってしまう人もいるが。それが許容される余裕のある社会であって欲しいものだ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 黒沢清
脚本 万田邦敏
出演 洞口依子/伊丹十三/麻生うさぎ/加藤賢崇