★★★★☆
あらすじ
難病の妻の治療のための保険が下りず、金策に行き詰まった男は、距離を置いていた犯罪者の兄に相談に行くが、そのまま銀行強盗の一味に加えられてしまう。
2005年のデンマーク映画「25ミニッツ」のリメイク作品。137分。
感想
銀行強盗から始まる物語だが、それが発覚する過程が面白い。ベテラン警官が銀行窓口の女性に片想いする相棒の新人警官のために、予定を変更して銀行に立ち寄ったことがその始まりだ。
本来なら粋で洒落た恋愛映画に発展してもおかしくない流れだが、それが銀行強盗中に行われたのだから何とも間が悪い。人質に取られて銃を向けられている窓口の女性に対して、しどろもどろでデートに誘う新人警官も、粋な計らいをした自分に満足しながら外から見守るベテラン警官も、どちらもとてつもなく間抜けで滑稽だった。コントならいいが、これは笑えない。
予定外の警官の登場で犯行がバレて銃撃戦となってしまい、主人公の二人の兄弟は救急車を奪ってなんとか現場から逃走する。タイトル通り、この救急車での逃走劇がメインとなる物語だ。普通なら単なるカーチェイスに終始してしまうところだが、けが人と救命士を乗せた救急車による逃走なのでほかにも様々なドラマが起きる。逃走劇でありながら、人質を取った立て籠もり劇でもあり、けが人を救う医療ドラマにもなっていて、良いアイデアの設定だ。
さらに、これに主人公ふたりの兄弟の物語も加わる。根っからの犯罪者の兄と善人の弟、正反対の二人の性格が、この必死の逃走劇の最中にも時に衝突を起こす。これらいくつもの要素が絡まって、引き締まったよい緊張感が続く。
最終的には、この兄弟が対決する構図になっていくのかと思ったが、その予想を裏切って二人の固い絆が描かれる展開になったのは熱かった。生き方も考え方も違うし、出来れば距離を取りたい相手だが、それでもいざとなれば相手のために危険さえ冒す。特に立ち寄った協力者のアジトでの危険なシチュエーションを切り抜けるシーンは印象的だった。
ただ、弟は善人で誰も殺したくないと言っているくせにそれはやるのか、と思わなくもなかったが。だが彼も元軍人なのでやるべき時はやる男なのだろう。相手も善人ではなく犯罪者だった。
それから逃走中の車内で二人が唐突に歌を歌い出すシーンも、長年かけて築いてきた彼らの関係性が垣間見えるようで、緊迫した状況が続く中で心なごむひとときだった。
目的地が遠すぎるとか、途中で乗り換えればよかったのに救急車にこだわりすぎとか、救命士は車内の医療道具を使えばもっと色々戦えたはずとか、ツッコみたくなるところがないわけではないが、スリルがあって十分に楽しめる内容だ。犯罪者を描いているのでラストは予想できるが、その過程は何が起こるか予測不能な映画だった。
スタッフ/キャスト
監督/製作 マイケル・ベイ
原作 25ミニッツ [DVD]
製作 ブラッドリー・J・フィッシャー/ジェームズ・ヴァンダービルト/ウィリアム・シェラック/イアン・ブライス
出演 ジェイク・ギレンホール/ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世/エイザ・ゴンザレス/ギャレット・ディラハント/ジェシカ・キャプショー/A・マルティネス
音楽 ローン・バルフ
アンビュランス (2022年の映画) - Wikipedia
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