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「運が良けりゃ」 1966

運が良けりゃ

★★★☆☆

 

あらすじ

 江戸時代の天明年間。暴れん坊の左官を中心とした貧乏長屋の連中の日々が描かれる。

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 「らくだ」「さんま火事」「突き落とし」「黄金餅」などの江戸古典落語を下敷きにした作品。91分。

 

感想

 江戸時代の貧乏長屋を舞台にした物語だ。ハナ肇演じる主人公は、ガサツで豪快な男だ。彼が自殺志願者を止めるのではなく積極的に手伝って、最終的には人殺し!と罵られてしまうシーンは可笑しかった。

 

 長屋やそこで暮らす人々の様子など、江戸の下町の雰囲気が良く表れている味わいのある時代劇だが、コメディとしてはそこまで笑えなかった。ただ古典落語を題材にしているので、元ネタを知っているともっと面白みを感じられるのかもしれない。

 

 笑いとしてはイマイチだが、その代わりに庶民のたくましさはひしひしと伝わってくる。金がなくても知恵を使って芸者遊びをし、大家の家賃の取り立てには開き直ってまったく払おうとしない。近所で人が死んでも生まれてもあっけらからんとしているが、当然のようにその面倒は見る。みんなが好き勝手なことを言い合いながらも、なんだかんだで助け合い、貧しいながらも明るく生きている。

 

 

 また権威に対する反骨心も垣間見える。店子の死に冷淡な大家に、主人公が仕返しをする場面は爽快感があった。しかもあからさまに歯向かうのではなく、慇懃無礼な態度でやり返すのが粋でカッコ良い。

 

 こういう反骨心も庶民らしさの一つだが、昨今はそうでもなくなってしまったなと遠い目をしてしまう。もはや誰も自分を庶民などと思っておらず、特別なオンリーワンだと思っているからだろう。権威から見れば昔と変わらず、十把ひとからげのその他大勢に過ぎないのだが。

 

 無鉄砲に見えた主人公だったが、さすがにもうヤバいから逃げるわと、ちゃんと状況を理解していることが窺える発言をしており、実はしたたかさも持っていることが分かる。ただの無鉄砲ならとっくの昔にこの世にいなかったはずだ。こういう人は空気を読むのに長けている。

 

 ラストは妹の晴れの日にやらかす主人公の姿が描かれる。敢えて主人公のセリフを聞こえないようにした最後の演出が心憎い。それでも彼の身振り手振りで、何を言っているのかがなんとなく分かってしまう。ハッピーエンドでもバッドエンドでもなく、いつも通りの相変わらずな主人公なのが良い。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本

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出演 ハナ肇/犬塚弘/倍賞千恵子/藤田まこと/桜井センリ/安田伸/田辺靖雄/砂塚秀夫/左卜全/花沢徳衛/穂積隆信/宮脇康之/谷よしの

*特別出演

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音楽 山本直純

 

撮影 高羽哲夫

 

運が良けりゃ

運が良けりゃ - Wikipedia

 

 

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