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「狂った野獣」 1976

狂った野獣

★★★☆☆

 

あらすじ

 銀行強盗に失敗し逃走中だった犯人に走行中のバスが乗っ取られ、混乱する車内。

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感想

 乗っ取られ暴走するバスが舞台となるアクション映画だ。まず犯人たちが銀行強盗に失敗するシーンから始まるが、拳銃を持っている彼らに警備員たちが素手で飛び掛かっていくのに驚いた。勇敢と言っていいのか、無謀と言っていいのか分からないが、とにかくワイルドだ。

 

 そしてバスジャックが起きる。最初はただどこかまで逃走するだけのつもりだったのに、降りるに降りられなくなって本格的なバス乗っ取りになってしまう流れはリアリティがあった。犯人たちの行き当たりばったりの無計画ぶりもよく伝わってくる。

 

 

 バス車内では、その犯人たちよりも乗客たちのフリーダムぶりが強く印象に残った。予定通りに目的地に行くことが出来なくなって犯人に文句を言ったり、説教したり、食ってかかったりとエゴ丸出しだ。挙句の果てには犯人をほったらかして乗客同士で喧嘩をしたり、痴話げんかを始める不倫カップルもいる始末で面白かった。

 

 全く事の深刻さを理解していないというか、肝が据わっているというか、今見るとコミカルに見えてしまうのだが、当時の観客たちはこれを普通の光景だと笑うことなくシリアスに見ていたのだろうか。当時の人から見たら今の日本人はとんでもなく従順に見えてしまうのかもしれない。

 

 中盤から主演の渡瀬恒彦演じる謎の乗客が主導権を握り出す展開も意外性があった。次第にカーアクションも激しくなっていくのだが、これらをスタントではなく渡瀬恒彦本人がやっているというから驚きだ。走行中のバスに飛び移ったり、横転させたりとかなり無茶なことをやっている。

 

 そんな中で室田日出男演じる白バイの警官が、歩道橋の上からジャッキー・チェン張りのアクションを試みるも盛大に失敗するシーンは思わず笑ってしまった。もちろんこれは実際にやったわけではなく、編集でやっているのだが。

 

 それから主人公の恋人役を演じた星野じゅんは、正直なところ演技は残念だったが、バイクに乗る姿はさまになっており、カッコ良かった。特に何をするわけでもなく、ただバスの周辺をウロウロしながら走っているだけだったが、全然見ていられた。

 

 ラストはありがちな悲劇的な逃走劇の終焉で終わらせず、ひねりのある展開で最後まで楽しませてくれた。主人公のしたたかさが心地良い余韻を与えてくれるが、それよりも強く心に残ったのは、ただの被害者で終わらなかった乗客たちのたくましさだった。本来、庶民とはこういうものなのだろう。

 

スタッフ/キャスト

監督/脚本 中島貞夫

 

脚本 大原清秀/関本郁夫

 

出演 渡瀬恒彦/星野じゅん/室田日出男/川谷拓三/片桐竜次/志賀勝/三上寛/笑福亭鶴瓶

 

音楽 広瀬健次郎

 

狂った野獣

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  • 渡瀬恒彦
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狂った野獣 - Wikipedia

狂った野獣[公式] - YouTube

 

 

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