★★★☆☆
あらすじ
1924年のパリ五輪に挑んだ二人の英国人選手それぞれの生き様を描く。
事実を基にした作品。アカデミー賞作品賞。原題は「Chariots of Fire」。
感想
二人の陸上選手が登場し、彼らのライバル関係が描かれていくのかと思ったが、そうではなかった。それぞれがそれぞれの思いを抱いて試合に臨む様子が個別に描かれていく。二人が直接絡むシーンはほぼない。一人は信仰との両立に悩み、もう一人はユダヤ人としての出自やアマチュアリズムに対する偏見と闘っている。
彼らが抱える問題の中では、「アマチュアリズム」の話がいまいちピンとこなかった。この言葉自体を今ではめっきり聞かなくなったが、その主張を聞いても要は金持ちの道楽を邪魔するなと言っているだけにしか思えなかった。せっかく仲間内で勝ったり負けたり楽しくやっているのに、本気で取り組む奴らが出てきて全く勝てなくなってしまったら面白くない、というのが本音のような気がしてしまう。既得権益を守りたいだけだ。
もしかしたら、道楽なんだから本業に支障が出ないようほどほどにしとけよ、のめり込むなよ、という金持ちならではの戒めの意味もあるのかもしれない。だがスポーツをやりはじめたら、勝ちたい、もっと上手くなりたい、と思うのは自然なことで、それを止めるのは難しい。だから最終的にはプロ化してしまうのは仕方がないことのような気がする。最高峰の試合を期待する観客の欲求もあるはずだ。
中盤には、スポーツ映画らしくちゃんと定番の特訓シーンもある。序盤の選手の走り方がギャグ漫画のようで笑ってしまったのだが、コーチが登場して正しいフォームを伝授する場面があり、ちゃんと伏線になっていた。トレーニングの中には、本当にそれは効果があるの?と思うようなものもあったのだが、こういう試行錯誤を繰り返した結果が今の近代的なトレーニングにつながっているのかと思うと、しみじみとした感慨がある。
ただやはりメインは、選手それぞれが抱える問題とどう対峙したのかを描くことなので特訓シーンは少ない。「ロッキー」のような高揚感を求めてしまうと物足りなさがある。それに今見ると全体的に冗長さを感じてしまい、クライマックスのオリンピックでの盛り上がりもいまいちだった。
振り返ると、有名なテーマ曲をバックに全員で海辺を走る序盤のシーンが、映画のマックスだったような気がする。
スタッフ/キャスト
監督 ヒュー・ハドソン
脚本 コリン・ウェランド
出演 ベン・クロス/イアン・チャールソン/イアン・ホルム/ナイジェル・ヘイヴァース/アリス・クリーグ/ナイジェル・ダヴェンポート/パトリック・マギー/リチャード・グリフィス/ジョン・ギールグッド/リンゼイ・アンダーソン
音楽 ヴァンゲリス
登場する人物
ハロルド・エイブラハムス/エリック・リデル/エドワード8世
この作品が登場する作品