★★★☆☆
あらすじ
アメフトの州大会で優勝することを目指す田舎の高校チームとコーチ。事実を基にした物語。原題は「Friday Night Lights」。
感想
高校アメフトの強豪校がある田舎町が舞台だ。選手やコーチは町の人から声をかけられ、チームは皆に応援され愛されている。町のアイデンティティにもなっていて、一見すばらしいのだがよく見るとそこには歪な姿が垣間見える。優勝を期待する町の人々がまだ17歳の選手に無意識に与えるプレッシャー。高給取りのコーチには、町の人々の善意による無責任で余計なアドバイスが寄せられ、試合に負ければ出て行けと罵られる。
地元の人々が高校のアメフトチームに示す異常な期待は、逆に言えば、それ以外には何も希望がない寂れた町だという証でもある。かつての選手たちは大人になっても優勝リングだけを心の支えに生き、選手たちは今が人生のピークなのだろうと薄々気づいている。町の人にはちやほやされ、女子にはモテるがそれも今だけだ。それを過ぎれば何人かの選手はスカウトされて大学に進学し、町を出ることができるが、その他のほとんどの選手は町に残る。
そんなアメフトチームのあるシーズンが、光と影を交えながらテンポよく描かれていく。主力選手のケガやチームの不調、新戦力の活躍など、スポーツものらしい起伏に富んだ展開で物語が進む。そして、その合間に選手やコーチの人間模様もしっかりと描かれている。
チームは何とかリーグ戦を勝ち抜き、プレーオフに進出する。順調に勝ち進み、強豪校との決勝戦がハイライトだ。有力選手を揃え、体格差も大きい相手チームに苦戦するも立て直し、必死の追い上げを見せる。手に汗握る展開で気持ちも盛り上がるのだが、思い通りの結末は待ち受けていなかった。
別にその結末はありといえばありなのだが、これは事実を基にした物語だ。なぜこれを題材にして映画化しようとしたのかが不可解で、キツネにつままれたような気分になってしまった。主力選手のケガやコイントスによるプレーオフ進出決定など、ドラマチックではあるが、そこまで珍しい話ではないような気がする。これだと強豪校が例年通りの強さを見せただけ、という印象だ。取り立てて面白みはない。
これなら無名の弱小校が破竹の勢いで勝ち進んだ方が断然ドラマチックだ。それならあの結末でも満足できた。ただこれは自分がアメリカの高校アメフトの世界を理解していないからそう思うだけなのかもしれない。誰かが日本の高校野球で説明してくれたら納得するのかも。
冒頭から助走もなく一気に本題に入って、そのまま最後まで突き進む映画だ。それぞれをじっくり描くわけではないのだが、ダイジェスト的にはならず、短い時間でちゃんと登場人物たちのキャラクターを浮き彫りにしていくのは見事だ。言葉少なながらも人格者であることを体現しているコーチ役のビリー・ボブ・ソーントンの演技が良かった。
ただ、テンポが良すぎるのが仇になってしまっているような気もする。これでもペースが早すぎると試写で言われて、スローダウンさせるためのシーンを追加したらしいのだが。それでも最後まで選手の顔とキャラクターが完全には把握できなかったくらいテンポが早かった。どんな選手がいて、どんなキャラクターがいて、というのは分かったので、別に置いてきぼりにされた気にさせないのはすごいのだが、もうちょっと要所要所ではじっくりと描くシーンがあっても良かったのでは、と思う。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 ピーター・バーグ
原作 Friday Night Lights: A Town, a Team, and a Dream
出演 ビリー・ボブ・ソーントン/ルーカス・ブラック/ギャレット・ヘドランド/デレク・ルーク/ジェイ・ヘルナンデス/リー・トンプソン・ヤング/ティム・マグロウ/コニー・ブリットン/アンバー・ハード/クリスチャン・ケイン
音楽 デヴィッド・トーン/エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ